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 本のコラム(2) 図書館の本だな
 『図書館だよりvol.86』掲載分

【大人の本棚】

『娯楽と癒しからみた古代ローマ繁栄史』(中川良隆著/鹿島出版会)(510.9/ナ)

 剣闘士。映画『グラディエーター』の影響で日本でも名前を聞いた人は多いだろう。戦いは、対人だけではなく、ライオンなどの猛獣と対決する「猛獣狩り」も行われていたようだ。そんな剣闘士には、奴隷からなんと皇帝までがいたという。「剣闘士皇帝」コンモドゥスである。彼もプロの剣闘士や猛獣たちと戦い、ローマっ子を熱狂させたそうだ。しかし彼は、猛獣狩りの際、元老院議員に度のすぎた威嚇行為を行い、部下に殺害され、政治的理由で「剣闘士皇帝」の幕を下ろした。また、模擬海戦を行うために人工池等に水を張り、軍艦を浮かべて歴史的海戦を再現していたそうなのだが、人工池と軍船の大きさを比較している所など興味深い。建築・歴史的読み物いずれの面からも面白い1冊である。

中川 良隆(なかがわ よしたか)昭和22年、東京生まれ。慶応義塾大学工学部卒業。工学博士、技術士(建設部門)。


【こどものほんだな】

『はげたかオルランドはとぶ』(トミー・ウンゲラー 作/文化出版局)(E ウ)

はげたかのオルランドは、砂漠で倒れていた金鉱探しの男を助け、持っていた写真から、アメリカに飛びました。奥さんと坊やが会いに行く道中、山賊に襲われますが、またもやオルランドが助け出し、インディアンの村に着き、お父さんと再会します。村はみんなで金鉱堀をはじめて栄え、オルランドは誰からも好かれるはげたかになりました。

トミー・ウンゲラーは1931年、フランスに生まれました。1956年にアメリカに渡り、画家・絵本作家など多方面にて活躍、1998年国際アンデルセン賞画家賞を受賞しています。本書に登場する禿鷹他、『へびのクリスター』の大蛇、『こうもりのルーファス』などの動物も、独特のユーモアで、とても魅力的に描き出されています。読んであげるなら4,5歳から楽しめます。

 『図書館だよりvol.85』掲載分

【大人の本棚】

『「本屋」は死なない』(石橋毅史著/新潮社出版)(024.1/イ)

 本著は、著者が、様々な書店、書店員を訪ねて交わした言葉、思いがつづられている。序章、終章合わせると10章から構成されるが、ほとんどの章で共通することは、「棚づくり」である。「書店員が本のタイトルに詳しくても意味はない。」「個別の商品知識、棚の構成が不可欠になる。」と語るのは岩波ブックセンター社長の柴田氏。「押さえておくべき作家の代表作を見つけないと棚はつくれないし…」とつぶやくのは月に約90冊読む、時代小説コーナーの田口書店員。
 「書店員こそ見に行くべき」と称される福島県南相馬市立中央図書館、「図書館にもいたバケモン」こと早川氏など、本に携わる人々のそれぞれの棚への思いが読み取れる。

石橋毅史(いしばし たけふみ)1970年、東京生まれ。出版社勤務を経て、新文化通信社入社。現在フリーランス。


【こどものほんだな】

『こぐま学校のバザー』(カートリッジ さく/偕成社)(E カ)

こぐま学校でバザーがひらかれることになりました。みんなで手作りのものを持ち寄るのです。エリックとルーシーの兄弟のうちでも家族そろってバザーに出す品物の準備にとりかかります。石に絵や模様を描いたぶんちん、マッチ箱をきれいに飾ったおたのしみばこ、たまごの殻に大根の種を蒔いて育てたたまごマンなどです。前日にはクッキーも作りました。
さあ、こぐま学校の バザーの はじまり はじまり。

カートリッジは1950年、ロンドンに生まれました。1979年にはイギリスの優れた新人画家に与えられる、マザー・グース賞を受賞しています。本書は、あたたかいパステル色で室内の装飾やこぐま達の洋服も細部にわたって描かれており、また、おはなしに登場した作品の作り方も載っています。読んであげるなら4,5歳から楽しめます。

 『図書館だよりvol.84』掲載分

【大人の本棚】

『能に憑かれた権力者 秀吉能楽好記』(天野文雄著/講談社出版)(K773.2/ア)

 秀吉といえば茶好き、吉野の花見など、こと、趣味においても、話題を欠かない男である。本書は、そんな男が愛したものの1つ、能についてを著している。秀吉は、鑑賞にとどまらず、役者として舞台に立つことが好きであったようだ。吉野山に来た際にも、「吉野詣」を秀吉自らが演じた。名所などを舞台にして、自らの功績をたたえる能をつくらせ、当地で演じるという、天下人らしい凝りようであったという。演者と演目が書かれた、「吉野蔵王堂前番組表」の中には、秀吉以外にも豊臣秀次、宇喜多秀家、小早川秀秋など、秀吉以後の歴史を左右する豪華な武将たちの名前も記載されている。

天野文雄(あまの ふみお)1946年、東京生まれ。著書に『能苑逍遥』などがある。


【こどものほんだな】

『かねもちのねことびんぼうなねこ』(B・ウェーバー 文と絵/大日本図書)(E ウ)

立派な家に住んで、良い名前と、おいしい食べ物と、柔かい寝床をもっている猫もいます。でもスキャットは野良猫です。自分だけのものなんか何もありません。そばへ寄っていくと、誰もがしっ!しっ!という意味の「スキャット」と呼びました。スキャットは自分で食べる物や寝る所を見つけて生きています。ある日、市場で出会った女の子に連れられ、柔かいベッドとグエンドリンという名前をもらいました。

画家バーナード・ウェーバーは、1924年フィラデルフィアに生まれ、ペンシルバニア美術アカデミーで学びました。「ライフ」誌他のグラフィックデザイナーを担当した後、「ワニのライルがやってきた」など多くの作品を手掛けています。
本書は、猫の社会にもある貧富の差をとらえたお話ですが、ユーモアを交えたストーリー展開でコミカルな挿絵が効果をあげています。読んであげるなら5,6歳から楽しめます。

 『図書館だよりvol.83』掲載分

【大人の本棚】

『英国メディア史』(小林恭子 著/中央公論新社)(070.2 コ)

 本書は英国メディアの歴史の15世紀から現在までを全7章に分けて、紹介している。その中で特に目に留まったのは、王室とメディアの関わりである。16世紀ごろ、チャールズ1世の公開処刑を伝えるニュース本が登場したそうだ。「私の合図を待て。」というチャールズ1世に対して「待っています。」と答える処刑人の描写が非常に生々しい。ニュース本は政治を国民にとって身近な存在へと変えたという。さらに20世紀まで時代を進ませると、当時「御伽噺のような結婚式」とよばれていたチャールズ皇太子とダイアナ妃のスキャンダルは、暴露本から始まり結果、彼女の死で幕を閉じるに至った。具体的な記述でたどる英国メディア史は、読み物しても味わえる興味深い1冊である。

小林 恭子(こばやし ぎんこ)1958年生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒業後、投資銀行勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙「デイリーヨミウリ」の記者になる。


【こどものほんだな】

『くまさぶろう』(ユノセイイチ 絵/もりひさし 作/こぐま社)(E ユ)

くまさぶろうは、泥棒名人です。砂場で遊んでいる子どものシャベルや、食べかけているコロッケ、さしている傘もです。そして、とうとう人の気持ちまで、すっと抜き取れるようになりました。お腹がすいた時には、お腹いっぱいの気持ちです。痛い気持ち、情けない気持ちまで取ると、子どもたちはとても元気になりました。今もくまさぶろうは、町から町へ旅を続け、泣きたい子どもの心を盗んで歩いています。

画家のユノセイイチは、1912年(大正1年)大分県に生まれました。油絵による抽象画を描くかたわら、児童図書の挿絵や絵本の製作も手がけました。フリーハンドの柔らかな線とこすって彩色した画法が特徴です。
本書もユニークな心温まるストーリーに、暖かなパステル色の絵が効果をあげています。読んであげるなら4,5歳から楽しめます。

 『図書館だよりvol.82』掲載分

【大人の本棚】

『神戸発 阪神大震災以後』(酒井道雄 編/岩波書店出版)(369.3 ブ)

あの未曾有の大震災から約16年の時を経て、日本は東日本大震災を経験することになった。各章では、それぞれ語り手を代えて、ストレスのかかる病院スタッフ、仮設住宅の抽選システムや高齢者の避難所暮らしの問題など、そこには、建前ではなく本音が描かれていて、今回の大震災と重なる所も多い。その中でひとつ、気になったのが、ボランティアについての一文「また救援活動にほんの少しだけ顔を出し、あとはタダメシを食らい宿泊費も浮かし、被災地見学ツアーを楽しむ、という不心得者も散見された。(中略)これらを反省することも教訓にしなければならないだろう。」という。阪神・淡路大震災の教訓はどこまでいかされているのか、もう一度見つめ直し、進むべき本当の復興への道を、考えさせられる一冊である。

酒井道雄(さかい みちお)1931年神戸市に生まれる。1958年京都大学農学部農林経済学科卒業。


【こどものほんだな】

『ゆきみち』(梅田俊作・佳子 さく/ほるぷ出版)(E ウ)

ばあちゃんちで 弟が生まれた。ぼくと とうちゃんは弟に会うために雪の中を急いだ。周りの風景には ばあちゃんとの思い出がいっぱいだ。そのうち雪はどんどんひどくなり、前を歩く とうちゃんは おおまたでずんずん進んで行き、ついにぼくは とうちゃんの姿を見失ってしまう。みんなは、いまごろ、あかんぼうを あやしてるんだろうな……。もう、ぼくの ことなんて、どうでもいいと おもってるんだ。――――「ようし、ぼく、しんでやる。」それでも、再び歩き出したぼくが見つけたのは木にくくりつけた とうちゃんのマフラーだった。そして遠くから ばあちゃんの呼ぶ声が聞こえてきた。

見開きいっぱいに容赦なく吹き付ける雪はダイナミックに、ばあちゃんとの風景は温かな筆のタッチ、と対照的な場面が交互に繰り広げられていきます。読んであげるなら4・5歳から。

 『図書館だよりvol.81』掲載分

【大人の本棚】

『街道をゆく ワイド版3』 (司馬遼太郎 著/朝日新聞社)(915.6 ヤ)

前回取り上げた、『島津義弘の賭け』の島津氏が治めていた地「薩摩」。今回は、司馬遼太郎氏が訪れた「肥薩のみち」の旅に注目して紹介します。※薩摩=現鹿児島、肥後=現熊本

旅の本といえば『るるぶ』や『まっぷる』だが、この『街道をゆく』シリーズではまた違った奥深い旅を味わえる。 『肥後は難国(おさめにくい国』と言われていたそうだ。その肥後に封ぜられたのは、かの加藤清正である。清正の熊本城は、島津氏にとって中央集権の象徴であったのだろうと司馬氏はいう。島津氏は、関ヶ原合戦以降も徳川への臨戦態勢を取り続けたそうだ。 その心意気たるや、「やはり隼人というほかはない。」 司馬遼太郎(しば りょうたろう)1923年〜1996年。 『梟の城』で直木賞受賞。NHK大河ドラマの原作として取り上げられるなど、日本を代表する歴史小説家。『竜馬がゆく』、『坂の上の雲』、『燃えよ剣』などの数多くの作品を遺している。


【こどものほんだな】

『ティムとひこうせん』(ジュディ・ブルック 作/冨山房)(E ブ)

はつかねずみのティムの所にはりねずみのブラウンさんが慌ててやって来ました。麦畑に住んでいる、かやねずみのピペット一家が犬や猫に捕まってしまいそうだというのです。ティムは麦畑へ急ぎました。が、恐ろしい声で吠えるので近づけません。そこで大きな飛行船をふくらまし、こまどりのロビンさんに引っぱってもらいながら飛んでゆき、無事助けることができました。その後みんな大喜びでパーティを開きました。

ジュディ・ブルックは1926年、イングランドに生まれました。学校時代にアーサー・ラッグから美術指導を受け、生涯で最大の影響を受けました。
本書は犬や猫も含め、愛くるしい表情の動物たちが見開きいっぱいに、いきいきと動き回っています。細やかな風景描写も楽しめます。読んであげるなら5,6歳から。

 『図書館だよりvol.80』掲載分

【大人の本棚】

『島津義弘の賭け』 (山本博文 著/読売新聞社)(210.48 ヤ)

今月は、前回紹介した『関ケ原合戦』で「島津の退き口」の一幕を見せる島津氏に注目して紹介します。

島津義弘は、慶長の役の泗川の戦いで、明軍二十万騎に対して五千に満たないほどの少数鋭でこれに勝利したと言われている。数字は『征韓録』によるもので、著者は敵の数に誇張があると考えている。しかし、相手は明軍の主力であることは事実であり、死力をつくした戦いがなければ相手を追い返すのは不可能であり、島津軍の卓越した戦闘力を認めている。この戦いの後、明・朝鮮連合軍は島津氏を「石曼子(シマヅ)」といってその強さを恐れた。
山本博文(やまもと ひろふみ)1957年岡山県生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。著書に『切腹』(光文社 210.5 ヤ)、『加賀繁盛記』(日本放送出版協会 214.3 ヤ)などがある。


【こどものほんだな】

『ビルのふうせんりょこう』(ライナー・チムニク ぶん・え/アリス館)(E チ)

どうしても空をとんでみたいビルは、自分の誕生日に100人のひとに招待状を出しました。《1つか 2つ ふうせんを もってきてください》 誕生日当日、たくさんのお客様が風船を持ってやって来ました。その夜、ばりーん!ベッドにくくりつけられた風船は屋根をつきやぶって空にふんわりこ。まわりのみんなは心配で真っ青です。

ドイツの絵本作家、ライナー・チムニクは5歳のときから絵を描きはじめました。高校を終えるとミュンヘンの美術学校で学び、挿絵の仕事を始めます。
本書は、色鮮やかなたくさんの風船が印象的で、登場人物のユーモラスな表情も愉快です。読んであげるなら4,5歳から楽しめます。

 『図書館だよりvol.79』掲載分

【大人の本棚】

『関ケ原合戦 戦国のいちばん長い日』(二木謙一 著/中央公論社)(210.48 フ)

前回取り上げた『小田原合戦』でも、副タイトルに注目した。今回の副タイトルは「戦国のいちばん長い日」である。実際は、関ケ原合戦は一日で終わった。著者は九月十四日から十五日までを人物をかえ、時間刻みで関ケ原合戦を語る。 結末の分かっている話はドラマチックでもあり、時間刻みで語られる話は非常に緊迫感が伝わってくる。東軍、西軍隔たりなく描かれ、関ケ原合戦の概要をつかむための本として面白い。中でも「午前九時 狙われる石田隊 一命を捧げまつる」の章は石田三成に仕えた島左近ついて描かれている。彼がどれほどの人物であったかが、短い章ではあるがよくわかるであろう。
「三成に過ぎたるものが二つあり島の左近と佐和山の城」
二木謙一(ふたき けんいち)1940年東京生まれ。著書に『大坂の陣』(中公新書)、『中世武家儀礼の研究』(吉川弘文館)などがある。


【こどものほんだな】

『はしって!アレン』(市川里美 絵/クライド=ロバート=ブラ 文/偕成社)(E イ)

アレンは4人兄弟の末っ子です。「ねえさんやにいさんといっしょにいるのよ」ママはいつもそう言いますが、姉さん達はとってもすばしっこくて、やっと追いついても、またどこかへ走っていってしまいます。「いそいで、アレン!」「ほら、はしって、はしって!」ある日、アレンは草の上でころんでしまいました。みんなも戻ってきて寝ころびました。一列にならんで…。アレンにとって、生まれて初めての素晴らしい時でした。

市川里美は1971年にパリに渡り、独学で絵を学びました。本書では「サンケイ児童文学賞美術賞」を受賞、1997年には長年の絵本作家としての活動が評価され、「アーチストに贈るパリ市長賞」を受賞しています。読んであげるなら3,4歳から楽しめます。

 『図書館だよりvol.78』掲載分

【大人の本棚】

『小田原合戦 豊臣秀吉の天下統一』(下山治久 著/角川書店)(210.48 シ)

この著書の副タイトルに「豊臣秀吉の天下統一」とあるが本来のテーマは、北条氏は「なぜ秀吉の攻略を受けなければいけなかったのか」である。つまり秀吉からみた小田原合戦ではなく、北条氏側から見た小田原合戦である。なぜ秀吉の攻略を受けるに至ったかについてだが、秀吉よりも前の織田信長の時代からその複線ははられていたのだと著者はいう。それは第二章の「武田攻めと北条氏の行動」からひもとかれる。北条氏邦宛の北条氏政書状で「甲斐・駿河の情報は、十日以来、当方には一切聞こえず候」とある。この、情報の圏外におかれたことが、小田原合戦に至る引き金となっていく。
下山治久(しもやま はるひさ)1942年東京生まれ、早稲田大学大学院修了(日本中世史専攻)大学院の修士論文のテーマは「北条氏照の領国支配」


【こどものほんだな】

『やまのたけちゃん』(深沢紅子 絵/石井桃子 作/岩波書店)(E フ)

たけちゃんは学校が終わると「ああ、はらがへった!はやくうちへかえろう」とかけ出して行きます。春にはおばあさんが作ったからすおどしに鬼や天狗の絵をぶらさげて田んぼのからすを追い払い、秋には兄ちゃん姉ちゃんと山へ落ち葉かきに出かけ、落ち葉でいっぱいになったかごにこっそりはいあがり、かごの上でどん!とはねると、ごろりん!とかごごと山をかけおりはじめ、大騒ぎになります。

洋画家、童画家の深沢紅子は夫、省三と共に作品を描く一方で子供達に日曜図画教室を開催するなど、子どもや野の花を愛し、没後には軽井沢に深沢紅子野の花美術館が開館しています。
「岩波の子どもの本」シリーズの1冊で1977年に出版されました。懐かしく、のどかな雰囲気がただよう、あたたかみのある絵本です。読んであげるなら5・6才から。

 『図書館だよりvol.77』掲載分

【大人の本棚】

『大和の古代寺院跡をめぐる』(網干善教 著/学生社)(K216.5 ア)

本書には、桜井市の歴史や思想的背景を感じるものもいくつか紹介されています。安倍廃寺は、飛鳥時代から政治の中軸で権勢をもった豪族、安倍氏の氏寺として建立された寺で、有名な日本三文殊菩薩像が祀られている現在の安倍文殊院は、中世の頃拠点が移ったもので、栄華を誇った古代の安倍寺は廃寺となりました。「関西の日光」と異名され、紅葉の名所として知られる談山神社。藤原氏ゆかりの寺院で格式の高い大寺院でしたが、時代の流れで明治維新の際、廃仏毀釈により廃絶しました。談山神社のシンボルともいえる妙楽寺十三重塔などはその名残です。
網干善教氏は、奈良県生まれです。日本の考古学者で関西大学名誉教授、関西大学飛鳥文化研究所長を歴任しました。1972年には、高松塚古墳で彩色壁画を発掘しました。


【こどものほんだな】

『三びきのかなしいトロル』(マリー・ブランド 作・絵/奥田継夫・木村由利子 訳/岩崎書店)(E ブ)

大昔からある森に、三匹のトロルがお喋りをしたり、取っ組合ったり、楽しく暮らしていました。でも、人間たちが信じてくれないので時々悲しくなりました。子どもが、「こんな森には、きっとトロルがすんでいる!」というと、大人は決まって、「それはおとぎばなしだ」と決めつけました。ある日のこと、トロルのいることを信じている二人の兄弟がやってきました。

マリー・ブランドはデンマークの絵本画家です。水彩や色鉛筆でかいた繊細な絵が特徴で、多くの創作や民話などに挿絵を描いています。本書も、鉛筆と色鉛筆を用いて、柔らかい色調と優しいタッチで描かれています。トロルについて、明るく陽気な森の小妖精として描かれており、トロルの不思議な力を感じさせてくれます。読んであげるなら4・5歳から楽しめます。

 『図書館だよりvol.76』掲載分)

【大人の本棚】

『絵筆をとったレディ−女性画家の500年−』(アメリア・アレナス 著/淡交社)(720.2 ア)

女性が社会的に、その才能を発揮することが困難であった時代に、輝かしい功績を残した女性画家たちがいました。本書ではルブランやモリゾ、コルヴィッツをはじめ、15世紀から19世紀末までの女性画家32名の稀少な66点の作品を、彼女たちが生きた時代背景なども踏まえ紹介されています。名前も知られていない、最近まで世に埋もれていた女性画家たちも取り上げられており、各時代のジャンルを超えた名画を楽しむことができます。

アメリア・アレナスは1956年ベネズエラ生まれ。84年〜96年ニューヨーク近代美術館教育部の講師として活動。現在は各国の美術館から美術教育講師やゲスト・キュレーターとして招かれ、対話型鑑賞プログラムや展覧会企画に携わっている。


【こどものほんだな】

『あかちゃんでておいで!』(ハイムラー 絵/マヌシュキン 作/偕成社)(E ハ)

トレイシーかあさんは、おなかにいるあかちゃんによくはなしかけます。もうすぐうまれるころになって、あかちゃんは「でていくの いや!」と言い出しました。おねえさん・おにいさん・おばあちゃん・おじいちゃんがそれぞれ声をかけますが、何を言ってもだめ。そのとき、とうさんがかえってきて家族とただいまのキスをかわすと、あかちゃんは自分にもしてほしくて、すぐに出たくなりました・・・。

ハイムラーは1937年アメリカに生まれ、絵画と挿絵の両方を学んだ。多数の児童書や本の表紙絵を制作し、アメリカの優秀児童図書に何度も選定されている。原書は1972年の出版で、白黒のペン画ながら、繊細なタッチがやわらかい表情をかもし出している。おなかの中で動きまわるあかちゃんが見えるのも楽しく、「ちゅっ」とキスをする音もリズミカルである。読んであげるなら4・5歳から。

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