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 本のコラム(2) 図書館の本だな
 『図書館だよりvol.120』掲載分

【大人の本棚】

『旅と祈りを読む 道中日記の世界』(西海 賢二著/臨川書店)(384.3ニ)

旅と祈りをテーマに、江戸時代の民間宗教者木食観正の逃亡者としての旅や、近世以降の仏教関係旧跡巡拝を紹介し、近世・近代の日記研究が歴史学と民俗学相互の研究成果利用の必要性を指摘します。
本書では、みちのくの山々、善光寺、富士山、石鎚信仰と四国遍路等について道中日記を活用しながら紹介し、民俗を読んで行きます。富士山では、撒き銭の事例を取り上げ、石鎚信仰と四国遍路では、両者を表裏一体の存在ととらえ、講を媒介とした信仰と宗教と経済が三位一体となって信仰が広まったものとして、各種の事例で説明されています。

西海 賢二 1951年神奈川県生まれ。筑波大学大学院歴史人類学研究科博士課程修了。現在、東京家政学院大学現代生活学部・大学院人間生活学研究科教授、古橋懐古館館長。著書に『筑波山と山岳信仰』(崙書房)『石鎚山と修験道』(名著出版)『生活のなかの行道』(ベネッセコーポレーション)他


【こどものほんだな】

◆『ボタンのくに』 なかむら しげお さく,西巻 茅子 さく/こぐま社(Eニ)

ぬいぐるみのぴょんは、あかいボタンの目をつけています。ところが、片方のボタンが落ちてしまいました。ころころころ広場へところがっていき、黄色いボタンの五つ子と遊んでいると、黒いボタンのおじさんにぶつかってしまいます。追いかけられ、逃げて行った先は、ボタンの国のお城。そこには、ぴょんからの手紙が届いていました。会いたくなったあかいボタンは、ぱちんこロケットでお家へ帰りました。

西巻茅子 1939年、東京に生まれる。1964年東京芸術大学工芸科を卒業。『ちいさなきいろいかさ』で第18回サンケイ児童出版文化賞など数多くの賞を受賞している。主な作品に『わたしのワンピース』『はけたよはけたよ』など。 
本書は、著者が絵本に対する憧れや気持ちを全部詰め込み、4年をついやし初めて出版した絵本。のびやかで柔らかな線と、カラフルな色彩で描かれている。読んであげるなら、3歳,4歳から楽しめる。

 『図書館だよりvol.119』掲載分

【大人の本棚】

『関西鉄道遺産 −私鉄と国鉄が競った技術史−』 (小野田 滋著/講談社)(686.2 オ)

関西地方では、官と民が競いながら独自の鉄道文化を築いてきました。私鉄王国と呼ばれる関西らしい鉄道建築であるターミナルビルディングや、鉄道橋梁、鉄道トンネルも関西が発祥地だそうです。
そのため、東京では見られない構造物が数多くあるようで、地域の景観の象徴としてもさりげなく機能しています。今まで何気なくみてきた鉄道の構造物、風景を改めて見直しさせてくれる興味深い一冊です。

小野田 滋 1957年愛知県生まれ。幼少期を兵庫県西宮市で過ごす。日本大学文理学部応用地学科卒業。1979年日本国有鉄道入社。現在は鉄道総合技術研究所勤務。土木学会フェロー。著書に『東京鉄道遺産』(講談社ブルーバックス)『高架鉄道と東京駅(上)(下)』(交通新聞社)『鉄道と煉瓦』(鹿島出版会)など。


【こどものほんだな】

◆『ともだち』 (ヘルメ・ハイネさく/ほるぷ出版)(Eハ)

おんどりのフランツ、ねずみのジョニー、ぶたのヴァルデマールは大の仲良し。朝みんなを起こすのも散歩も一緒。自転車を引っぱり出して、出発進行!遊ぶのも、なんでも話し合って決めるのが当たり前。だってともだちだもん。「いつまでも ともだちだ。ぜったいに はなれっこなしだよ。」夢の中でも一緒に遊ぶ。だって、ともだちだもの。

ヘルメ・ハイネは1941年ドイツのベルリンに生まれる。大学で美術学び、1976年絵本作家としてデビュー。1983年本書でみみずく賞を受賞。主な作品に、『やっぱりともだち』『ぞうのさんすう』『ボヨンボヨンだいおうのおはなし』など。 
本書は、おんどり・ねずみ・ぶたというユニークな組み合わせが楽しい。3匹のいきいきとした表情や行動は魅力的。リズミカルな文章が効果をあげている。佑学社より刊行されている『ぼくたちともだち』の復刻版。読んであげるなら、3歳,4歳から楽しめる。

 『図書館だよりvol.118』掲載分

【大人の本棚】

『寄生獣』 (岩明 均 著/講談社)(726.1 イ)

高校生の泉新一は、残虐な手口の「ひき肉(ミンチ)殺人事件」の“犯人”が、人間の脳に寄生する新生物だと知っている。だが、彼もまた右手に寄生生物を宿していて…。
残虐に人間が食い殺される描写など、過激な場面もあるが、奥が深いテーマと意外かつ劇的な展開にどんどんひきこまれていく。2014年11月公開の同名映画の原作漫画。

岩明 均 1960年東京生まれ。1985年、「モーニングオープン増刊」に『ゴミの海』が掲載され、デビュー。『寄生獣』で1993年に第17回講談社漫画賞一般部門、1996年に第27回星雲賞コミック部門受賞。『ヒストリエ』で2010年に第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、2012年に第16回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。


【こどものほんだな】

◆『おふろだいすき』 (松岡 享子/作,林 明子/絵/福音館書店)(Eハ)

ぼく、おふろだいすき。おふろへ入る時は、いつもあひるのプッカをつれていく。一人で体も洗えるんだ。お湯の中で遊んでばかりのプッカが「まこちゃん、おふろのそこに、おおきなかめがいますよ。」っと、大あわて。次々と、大きなかめや、ペンギン、オットセイ、かばに、くじらがあらわれたんだ。ペンギンたちが石鹸を追いかけて競争したり、石鹸を飲み込んだオットセイの口からシャボン玉がでてきたり、みんなでお湯につかって50数えたりしたんだ。

林明子は、1945年東京に生まれる。横浜国立大学教育学部美術科卒業後、カット絵を描きながら絵本について学ぶ。主な作品に、『はじめてのおつかい』『あさえとちいさいいもうと』『きょうはなんのひ?』等。 
本書は、子どもの想像の世界を、柔かな筆遣いで温かく描いている。個性あふれる動物たちと一緒にお風呂に入るストーリーは楽しく、子どもたちの気持ちを引き付ける。 読んであげるなら、4歳から楽しめる。

 『図書館だよりvol.117』掲載分

【大人の本棚】

『ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン』 (トゥーラ・カルヤライネン 著/セルボ貴子・五十嵐 淳 訳/河出書房新社)(726.5 カ)

2014年は世界中で愛されているムーミン一家を生んだトーベ・ヤンソンの生誕百周年にあたります。ヤンソンの作品のなかで、日本においては「ムーミンシリーズ」が有名ですが、彼女は芸術家としての多彩な顔を持ち、自由を何よりも大切にしました。(ちなみに職業について尋ねられると画家と答えていたそうです)
本書はそんなヤンソンの生きざまを感じさせてくれる評伝です。ムーミンがどのようにして創られたかを理解するにも興味深い1冊です。

トゥーラ・カルヤライネン1942年フィンランド生まれ、ヘルシンキ市立美術館、ヘルシンキ現代美術館元館長。トーベ・ヤンソン生誕百周年を記念してヘルシンキのアテネウム美術館で開催された大規模な回顧展のキュレーターを務めた。2014年、本作品はフィンランド語の優れたノンフィクション作品に贈られるラウリ・ヤンッティ賞を受賞した。


【こどものほんだな】

◆『ぶたぶたくんのおかいもの』 (土方 久功 さく・え/福音館書店)(Eヒ)

いつでも「ぶたぶたぶた」と言うこぶたのことを、みんなは「ぶたぶたくん」と呼びました。ある日、お母さんに頼まれて、はじめてお買い物に行きました。お店屋さんは「ひとりでえらいね」とほめてくれました。カラスのかあこちゃんや大きなこぐまくんと一緒に「ぶたぶた かあこお くまくま どたじた」とおしゃべりしながら歩きました。無事に帰ったぶたぶたくん。「ぶたぶた。ぼく ひとりで おかいもの できたよ」

土方久功は、1900年東京に生まれる。東京美術学校彫刻科を卒業し、1929年に南米パラオ島へ渡る。1931年にヤップ離島のサトクヌ島で、原住民と生活を共にしながら、彫刻の製作と島の民俗学的な研究を行った。主な作品に、『おおきなかぬー』『ゆかいなさんぽ』など。
本書は、登場人物たちが太い黒線と優しい色彩で表情豊かに描かれている。リズミカルな擬音も楽しい。後頁のぶたぶたくんが歩いた道の地図も、再度お話を楽しめ効果をあげている。読んであげるなら、3歳,4歳から楽しめる。

 『図書館だよりvol.116』掲載分

【大人の本棚】

『検証 長篠合戦』 (平山 優 著/吉川弘文館)(210.48 ヒ)

長篠合戦は織田・徳川連合軍の三千挺の鉄砲隊が三段撃ちで武田勝頼の軍勢を撃破したことで知られ、これによりこの合戦は先見的な天才と保守的な愚者という図式が通説となっているようだ。
本書では、織田信長の軍隊が武田勝頼の軍隊と比べて、先進的な性格の兵農分離の軍隊(職業軍人の精鋭)という通説について、それを証明する研究が一切存在しないということや、昨今多岐にわたってこの合戦に対する通説への批判が高まっていると述べている。
様々な観点から長篠の合戦を再検証することで、この合戦像の再構築を試みた興味深い1冊である。

平山 優 1964年生まれ。1989年立教大学大学院文学研究科前期課程修了。現在、山梨県立中央高等学校教諭。著書に『戦国大名領国の基礎構造』(校倉書房)、『武田信玄』(吉川弘文館)他。


【こどものほんだな】

◆『めっきらもっきらどおんどん』(長谷川 摂子 作/ふりや なな 画/福音館書店)(Eフ)

今日は遊ぶ友達が誰もいない。どうしたんだろう。むしゃくしゃしたかんたは神社で、めちゃくちゃの歌をうたった。「めっきら もっきらどおんどん♪」すると、奇妙な声が木の根元の穴から聞こえ、のぞき込んだとたん吸い込まれていった。穴の中にはへんてこりんな3人組がいた。遊んでくれ〜とせがまれて、夢中で遊んでいるうちに夜になってしまった。かんたは急に寂しくなり、思わず「おかあさーん」と叫ぶと…。

降矢ななは、1961年東京に生まれる。モーリス・センダックの絵本と出会い、絵本の仕事を志しスロヴァキア共和国のプラチスラヴァ美術大学で石版画を学ぶ。主な作品に、『ちょろりんのすてきなセーター』「おれたち、ともだち!」絵本シリーズなど。
本書は、力強い線と鮮やかな色合いで、見開きいっぱいに描かれている登場人物たちは迫力があり楽しい。読んであげるなら、3歳,4歳から楽しめる。

 『図書館だよりvol.115』掲載分

【大人の本棚】

『哲学カフェのつくりかた』 (鷲田 清一 監修/大阪大学出版会)(107 テ)

「哲学カフェ」という言葉を聞いたことがありますか? 進行役がいて、テーマを設け、その場にいる人たちが話して聞いて考えるという、シンプルな対話ワークショップです。
本書では、哲学カフェの基本情報、参加、開催に関するQ&Aに始まり、編者であるカフェフィロのメンバーが、街のカフェ、育児サークル、駅などで行われた哲学カフェに実際に参加し、開催する側、参加する側の両面から哲学カフェを紹介しています。
いったい、哲学カフェではどんなやりとりがなされ、参加者がどのように楽しんでいるのか・・・本書でその疑問を解決していくと、そのような哲学のあり方が、社会の中でどのような意義をもち、今必要とされているのかがわかってきます。

鷲田 清一 1949年京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。大阪大学大学院文学研究科教授、同研究科長、理事・副学長、総長をへて、現在大谷大学教授、せんだいメディアテーク館長。


【こどものほんだな】

◆『ふしぎなバイオリン』(クェンティン ブレイク/文・絵/岩波書店)(Eブ)

パトリックは、なけなしの銀貨をはたいて、バイオリンを買ったんだ。嬉しくて池のほとりに座って弾き始めたら、なんといろんな色の魚達が飛び出し、音楽に合わせて空を飛びまわり始めたんだ。それからも子ども達のリボン、木の葉や鳥達もきれいな色になり、めうし達は踊り、おまつりの行列みたい。そして、どこでもパトリックがバイオリンを弾くたびに、へんてこりんなことがおこったんだ。

クェンティン・ブレイクは1932年イギリスに生まれる。ケンブリッジ大学、チェルシー美術学校で学ぶ。1999年にはイギリス皇室から初代名誉児童文学作家の称号を授かるなど、イギリスを代表する児童文学作家のひとり。主な作品に、『アーミテージさんのすてきなじてんしゃ』『マグノリアおじさん』などの絵本や、ロアルド・ダールの作品の挿絵が多い。
本書は、登場人物たちの表情や動きがいきいきとユーモラスなタッチで描かれており、パステルカラーの色彩も楽しく印象的。どんどん増えていく、へんてこりんな行列はユーモラスにあふれている。 読んであげるなら、4・5歳から楽しめる。

 『図書館だよりvol.114』掲載分

【大人の本棚】

『死の棘・アスベスト 作家はなぜ死んだのか』 (加藤 正文 著/中央公論新社)(519.3カ)

作家藤本義一氏が2012年10月30日にアスベストの吸引が原因とされる「悪性胸膜中皮腫」で死去した。
本書では、その発症にいたるまでの可能性を調査するなかで、堺市在住時の石綿麻袋の再生業者の存在、宝塚映画時代のスタジオ粉塵、阪神淡路大震災被災者支援時代の復旧に伴う粉塵の吸引が考えられると指摘する。そして、背景となる産業におけるアスベストの歴史から、生産、流通、消費、廃棄の各過程での粉塵発生のメカニズムを国内外の事例も説明している。
中皮腫発生後の政府・企業の対応や、東日本大震災の復旧作業時に繰り返される、防止対策の欠如等に警鐘を鳴らしながら、被害者及び家族等の実際の声を伝え、アスベスト問題を正しく情報発信する必要性を訴えている。

加藤 正文 1964年兵庫県西宮市生まれ。大阪市立大学商学部卒業、神戸新聞論説委員兼編集委員をへて現在経済部次長。著書に『工場は生きている−ものづくり探訪』(かもがわ出版)『忍び寄る震災アスベスト 阪神・淡路と東日本』(共著、かもがわ出版)他。


【こどものほんだな】

◆『こすずめのぼうけん』 (ルース・エインワース さく,ほりうち せいいち え/福音館書店)(Eホ)

木づたのつるの巣のなかに一羽のこすずめがいました。柔らかい茶色の羽がはえ、お母さんすずめがとび方を教えました。胸をそらせ羽をぱたぱたさせると前に飛び立ち、うれしくなったこすずめは飛んでいきますが、少しずつ羽が痛くなってきました。「あの、すみませんが、なかへ はいって、やすませていただいて いいでしょうか?」と、からすや山鳩やふくろうの巣にとまって頼みましたが、鳴き声がちがうと休ませてもらえません。だんだんと暗くなってきましたが・・・

堀内誠一は1932年に東京に生まれる。カメラ雑誌、ファッション誌などの編集美術を多く手がけ、イラストレーターとして絵本その他児童書に活躍。主な作品に、『くろうまブランキー』『たろうのばけつ』『こぶたのまーち』など。
本書は、飛び始めたこすずめが等身大で描かれていて愛らしいストーリー展開。登場人物たちの特徴をとらえた挿絵も効果をあげている。くりかえしでおはなしがすすんでいくので、語りにも向いている。
読んであげるなら、3から楽しめる。

 『図書館だよりvol.113』掲載分

【大人の本棚】

『1秒って誰が決めるの?』 (安田 正美著/ちくまプリマー新書)(449.1 ヤ)

私たちにとって時間はいつも意識せざるをえないものです。そしてそれを計ることのできるものが時計という道具です。
本書は時を計る技術の長い歴史を丁寧に解説しながらたどっています。人類最初の時計であるといわれる「暦」は、太陽や月の動きを基準に時間の流れを測り、体系づけていくことで、何千年もの間人間にとっては、時計代わりだったそうです。現在は、原子時計の開発が進められています。この技術の研究開発の最前線に携わっている著者は、時間計測の精度を極めていくことによって、社会はどのように変化し、次の時代にどのようなことが起こるかを著しています。
技術の進歩がいかに社会に影響を与え、変化させていくか、また未来を拓いていくかを強く感じさせてくれる1冊です。

安田 正美 1971年生まれ。東京大学で物理工学を学び、1998年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。米国イェール大学博士研究員、東大助手を経て、2005年より産業技術総合研究所計測標準研究部門時間周波数科波長標準研究室主任研究員。


【こどものほんだな】

◆『ふわふわくんとアルフレッド』 (ドロシー・マリノ 文・絵/岩波書店)(E マ)

アルフレッドは生まれたときから、くまのおもちゃのふわふわくんとともだちでした。食べるときも、遊ぶときも、寝るときもいっしょです。けれどもある日、とらのおもちゃのしまくんが送られてくると、いつでもいっしょ、ふわふわくんに見向きもしませんでした。
寂しくなったふわふわくんは、大きな木にのぼり下りてこなくなりました。

ドロシー・マリノは、1912年アメリカ、オレゴン州に生まれる。カンザス大学で絵を学ぶ。卒業後、ニューヨークへ出て、働きながら絵の勉強を続ける。主な作品に、『くんちゃんのだいりょこう』等のくんちゃんシリーズ、『おかあさん、なにしてる?』など。
本書は、子どもの視線で「おもちゃ」とのかかわりあいが描かれている。内容とあったやわらかな筆のタッチで描かれており、白黒のモノトーンに赤が効果的に使われている。
読んであげるなら、3,4歳から楽しめる。

 『図書館だよりvol.112』掲載分

【大人の本棚】

『カレーライスの誕生』 (小菅 桂子著/講談社選書メチエ)(383.8 コ)

日本人は子どもから大人まで、カレーが好きである。インドからやってきたカレーがどのようにして日本人の間に定着し、国民食とまでいわれるようになったのでしょうか。
本書は現在に至るまでのカレーの歴史や、それにまつわるさまざまな日本人の知恵を紹介しています。
例えば、幕末の日本に「カレー」という言葉を福沢諭吉が紹介したのが文字に書かれた日本最古のものであるとか、カレーと福神漬けのコンビはどのようにうまれたのか、なぜ関西では牛肉、関東では豚肉なのかなど、カレー通になれる1冊です。

小菅 桂子。1933年生まれ。昭和女子大学短期大学部卒。専門は食文化史。著書に『水戸黄門の食卓』(中公新書)『近代日本食文化年表』(雄山閣)『グルマン福沢諭吉の食卓』(中公文庫)他


【こどものほんだな】

◆『まいごになったぞう』 (てらむら てるお ぶん/むらかみつとむ え/偕成社)(E ム)

ぞうの赤ちゃんが、まいごになりました。出会ったきりんやかばは、「どうしたの」と尋ねますが、赤ちゃんは「あばば、うぶー。」としか言いません。わにやらいおんは、「うまそうなこぞうだな」と思いますが、「あばば、うぶー」というのを聞くと可愛くなりました。「はやく おかえり」と、放り投げられたり、ころがされたり、ごろんごろん、ごろんごろん、ごつん!・・・ぶつかったのは、お母さんの足でした。

村上勉は、1943年兵庫県に生まれる。緻密、繊細な線画と色彩の画風は内外で高い評価を受け、ライプツィヒ国際図書展賞、小学館絵画賞などを受賞。主な作品に、『おおきなきがほしい』『おばあさんのひこうき』『きつね三吉』など。
本書は、迷子になりながらも自由に振る舞うぞうのあかちゃんと、助けてくれる動物たちを、表情豊かに柔らかいタッチで描いている。ほほえましいストーリー展開と絵が相乗効果をあげている。読んであげるなら、2,3歳から楽しめる。

 『図書館だよりvol.111』掲載分

【大人の本棚】

『歳月(上)(下)』 (司馬 遼太郎著/講談社文庫)(B913.6 シ)

肥前佐賀藩に生まれた江藤新平の幕末から、佐賀の乱まで、わずか七年間に、栄光と転落を味わった「ふしぎ」な生涯を描いた歴史長編小説。
維新の功臣のなかで江藤新平と大久保利通だけが他の連中とはまったく別種の才能をもってうまれていた。国家の基本的な体制をつくりあげるということである。ただ、かれらの不幸は、国家設計というおなじ一点に関心をもちつつも、双方動機思想を異にしていたことであった。世間の人々は江藤を最大の策士と考えていたが、実際の彼は不幸すぎるほど、そういった謀才の能力をもたなかった。佐賀の乱に敗れた後も、「一身のことなど、天下のためにはどうなってもかまわない。私はただ政治的所信をつらぬくためにのみ生きるのだ」と、その生き方は、彼の政敵である大久保利通とは、非常に対照的である。

司馬遼太郎 1923年大阪市生まれ。1956年講談社倶楽部賞をはじめとして、直木賞、吉川英治賞など受賞。1993年には、文化勲章を受章。1996年72歳で他界した。『竜馬がゆく』『坂の上の雲』『翔ぶが如く』など司馬史観と呼ばれる著書が多数ある。


【こどものほんだな】

◆『おしいれおばけ』 (マーサ=メイヤー さく/偕成社)(E メ)

おしいれには いつだって いる あいつ。だから僕は、寝る前はきちんとおしいれの戸締りをするけれど、やっぱり怖くって。ある晩のこと、僕はあいつをやっつけることに決めた。暗くなると、ぬきあし、さしあし、しのびあしで近づいてきた。そこで、ぱっと明りをつけ、「さあ、手をあげろ!」おもちゃの鉄砲をつきつけて、ポコンとひとうち!なんと、あいつは泣き出してしまい・・・。

マーサ=メイヤーは、1943年アメリカ、アーカンサス州生まれ。ハワイで幼少期を過ごし、ホノルル・アート・アカデミーと、ニュヨークで絵を学ぶ。「かえるくんのほん」シリーズより絵本・挿絵の仕事に専念。主な作品に、『ほんとだってば!』『かえるくんどこにいるの?』『やねうらおばけ』など。
本書は、こわがりで想像力豊かな子供たちの姿を等身大でユーモラスに描かれていて、読み手の子ども達の共感をよぶ。登場人物たちの表情は豊かで動きがある。最後の子どもの安心した寝顔で読後感も満足がいく。読んであげるなら、3,4歳から楽しめる。

 『図書館だよりvol.110』掲載分

【大人の本棚】

『残念な人の思考法』 (山崎 将志著/日本経済新聞出版社)(159.4 ヤ)

残念な人とは、“ホウレンソウ”をおろそかにしたために、「聞いてない」とせっかく作った企画をご破算にしてしまったプランナー、顧客は自分のビジネスにどう役立つかが知りたいのに、製品の機能説明を延々としてしまった営業マンなど、やる気も能力もあるのに、何かが間違っているために、結果がでない「もったいない人」のことであり、そのような人は、もともとそうだったのではなく、組織の中のシステムの進化など仕事の進め方が便利になった結果、つくられていくと述べています。
本書では、この日常の残念な例をもとに、プライオリティ思考法のヒントが紹介されており日々の仕事に応用できる構成になっています。

山崎 将志 1971年愛知県生まれ。東京大学経済学部卒業、ビジネスコンサルタント。著書に『残念な人のお金の習慣』(青春出版社)『仕事オンチな働き者』(日本経済新聞出版社)『ロジカル・シンキングの道具箱』(日本実業出版社)他


【こどものほんだな】

◆『ぼくがげんきにしてあげる』 (ヤーノシュ 作・絵/徳間書店)(E ヤ)

小さなとらがよろよろと森から出てきて、草むらのまん中でばったりと倒れました。すぐに小さなくまが走ってきて、家へ運び看病をしてあげます。ほうたいを体中にした後、おいしいスープを作り、ふかふかのソファに寝かせました。でも、小さなとらはしてほしいことがあると、すぐにまた具合が悪くなるのです。とうとう、動物病院へ行きたくてたまらなくなりました。

ヤーノシュは、1931年ポーランド国境近くの小さな村に生まれる。7年間錠前工として働き、美術学校で学ぼうとするが挫折。ほぼ独学でデザインを学んだ後、画家、絵本作家などとして活躍。主な作品に、『とべとべとり』『おばけリンゴ』『ぼくはおおきなくまなんだ』など。
本書は、柔らかなタッチと鮮やかな色彩で描かれている。登場人物たちのユーモアあふれる表情や行動が、魅力的。
読んであげるなら、4,5歳から楽しめる。

 『図書館だよりvol.109』掲載分

【大人の本棚】

『読む力は生きる力』 (脇 明子著/岩波書店)(019.2 ワ)

子どもが本を読むことは大切であると誰もが口にしますが、その理由を明確に答えることはなかなか難しいことです。著者は真正面からこのテーマに取り組んできました。
昔のこどもたちは本を読まなくても立派に育ったと言われますが、大人から子どもへ伝承されるべき、生きていくために役立つ生活文化が消滅しようとしている今の時代、その代りができるのは本であり、その価値は内容よりも読むという精神活動そのものにあると述べています。
本書は、様々な事例を挙げることでわかりやすく記載されていて、上記のテーマを幅広く追求しています。
今の時代の子どもたちに起きている問題の答えの一つが示されている渾身の一冊です。

脇 明子 1948年生まれ 東京大学大学院人文科修了、ノートルダム清心女子大学教授、岡山子ども読書活動推進会議会長。著書に『幻想の論理』『ファンタジーの秘密』(以上、沖積社)他


【こどものほんだな】

◆『はるかぜのたいこ』 (葉祥明 絵/金の星社)(E ヨ)

とても寒がりのうさぎがいました。セーターの上にオーバーを着て、厚い靴下の上にブーツをはき・・・それでも寒いので、楽器屋のくまさんに頼みました。くまさんは大きな太鼓を出してきて「どーんと,たたいて ごらんなさい。それから,めを つぶって ごらんなさい。すぐに あったかく なるから・・・」すると、どうでしょう。たたくたびに、うさぎの顔にあったかい風がかかり、よもぎ野原にいる気持ちになりました。

葉祥明は、1946年熊本県に生まれる。大学を卒業後、ニューヨークに留学し、油絵を学ぶ。1990年『風とひょう』でボローニヤ国際児童図書展グラフィックス賞を受賞。主な作品に、『ぼくのあおいほし』『森が海をつくる』など。
本書は、柔らかな筆遣いであたたかい雰囲気を醸し出している。登場人物たちの表情も会話もやさしい。両開きいっぱいに広がる春の景色が印象的。読んであげるなら、3,4歳から楽しめる。

 『図書館だよりvol.108』掲載分

【大人の本棚】

『「福音書」解読 −「復活」物語の言語学−』 (溝田悟士著/講談社)(193.6 ミ)

「イエスキリストは、すべての人の罪のために死に三日目に復活した。」という記述は、3つの共観福音書に書かれているが、その内容はそれぞれの書で少しずつ違う部分がある。本書は、一番初めに書かれたとされる『マルコ福音書』を取り上げている。物語に登場する一人の「若者」という人物について検証して、「どう読めば内容を持った1つのテクストとして理解できるのか」に焦点をあてて、イエスの復活について、言語学の方法論を用いて分析している。
「本書は、歴史上のイエスが、実際に身体を持って復活したか、しなかった、という問いについては、読者の皆さんへの「問いかけ」として肯定も、否定もしないで、そのまま残しておこうと思います。」としめくくる。

溝田悟士 1976年広島県生まれ。広島大学大学院総合科学研究科研究員。専攻はテクスト言語学・歴史学。論文に、『ロザリオと数珠の起源に関する仮設』(「愛知論叢」第84号)、『マタイ、ルカ両福音書におけるマルコ14:51-52の共通削除について』(「欧米文化研究」第17号)がある。


【こどものほんだな】

◆『ハイワサのちいさかったころ』 (エロール・ル・カイン え/ほるぷ出版)(E ル)

キラキラかがやく大きな海の水がパチャパチャと打ち寄せる所に、テントのおうちがたっていた。そこに暮らす、月の娘ノコミスおばあさんは、ハイワサ坊やをあやしながら、いろんなことを教え、見せた。
天のキラキラお星さま、ホーキ星、天に向う白い道、夕ぐれの中を飛ぶホタル、月の姿、天にかかる虹、フクロウの笑い声・・・。ハイワサは全部の鳥や、けもの達のコトバを習った。坊やはいつも彼らを「ハイワサのきょうだい」と呼んだ。

エロール・ル・カインは、1941年シンガポール生まれ。十代半ばにロンドンに出、広告会社で製作したアニメーションが認められる。1968年に初めての絵本『アーサー王の剣』を出版。本書で、1985年にケイト・グリーナウェイ賞を受賞。代表作に『いばらひめ』『キャッツ』など。
本書は、ヘンリー・ワズワース・ロングフェローのインディアン神話の詩を絵本にしたもの。力強く、神秘的な大自然が画面いっぱいに描かれており、詩文と共に迫力がある。読んであげるなら、4,5歳から。

 『図書館だよりvol.107』掲載分

【大人の本棚】

『「豊かな地域」はどこがちがうのか 地域間競争の時代』 (根本 祐次著/筑摩書房)(318.6 ネ)

今、日本では人口減少や厳しい経済状況により弱体化する地域が増えていることが大きな問題になっています。 しかしながら一方で成長している地域も存在しています。この豊かな地域と衰退している地域との違いはどこにあり、そこでは何がなされているのでしょうか。
本書では客観的に地域を分析する手法を紹介し、全国の11の地域を検証しています。このように客観的データをもとにして自治体経営をおこなうシティ・マネジメントを導入することで地域の生き残りを図れるように活動することを提唱している1冊です。

根本 祐次 1954年鹿児島県生まれ 東京大学卒業後、日本開発銀行に勤務した後、現在は東洋大学経済学部教授。著書に『朽ちるインフラ』(日本経済新聞出版社)『地域再生に金融を生かす』(学芸出版)他


【こどものほんだな】

◆『ここにいたい!あっちへいきたい! にひきののみのはなし』 (レオ=レオニ作・絵/好学社)(E レ)

ふわふわの犬の背中にすんでいる“にひきの のみ”「もっと いろんな ところを しりたいと おもわないかい?」「ぼくは ここに いたい。」好奇心旺盛な1匹に引っ張られ、“にひきの のみ”は、めんどり、やまあらし、もぐら、カメの背中へ引っ越していきます。
どこへ行っても、幸せな気持ちになる1匹と、悲観的になる1匹の対比が愉快なおはなしです。

レオ=レオニは、1910年オランダ、アムステルダム生まれ。1939年にアメリカに渡り、イラストレーター、グラフィックデザイナー、絵本作家として活躍中。主な絵本に『あおくんときいろちゃん』『スイミー』『フレデリック』など。
本書は、「色の魔術師」と称されるレオ=レオニ独特な美しいコラージュの世界で、くっきりとした色彩が印象的である。のみ達の姿がなく、セリフだけなので、子どもたちは自由に想像して楽しめる。読んであげるなら3、4歳から。

 『図書館だよりvol.106』掲載分

【大人の本棚】

『成功のためのボディ・ランゲージ』 (デイビッド・ルイス著/金利光訳/東京図書)(801.9 ル)

東京オリンピック招致に成功したプレゼンテーションでは、身振り手振りが工夫されて、話す内容とともに注目を浴びました。
本書は、語らずして成功するほどにものを言う、ボディランゲージを有効に用いて、「巧みに使いこなすことは、社交の場や仕事において、目的を達成するカギとなるであろう。」と言っています。
体の動き、手振り、しぐさなどの動作、姿勢、表情、視線などの状態について、握手などのアクション、そして空間との関係に至るまで、サイレント・スピーチの効果について説いています。また、相手の言葉には表されていない気持ちを読み解くための説明もあります。実践的な手引書として、絵や写真も用いていて有効です。また、すぐに役つようにと、効果的なサイレント・スピーチの要点を基本ルール31項目にまとめていることも助けになります。
原書のタイトルは、The Secret Language of Success。

訳者、金利光は、京都大学英米文学科卒業。翻訳家。訳書に、『春の祭典』モードリス・エクスタインズ著(みすず書房)、『恐怖の博物誌』イーフー・トゥアン著(工作舎)、などがあります。


【こどものほんだな】

◆『おまえを たべちゃうぞーっ!』 (トニー・ロス作・絵/岩崎書店)(E ロ)

遠い、遠い宇宙の果てから、小さな星を目指して宇宙船がやってきた。おりてきた怪獣は「グワーッ たべちゃうぞーっ!」と、あらゆるものをムシャムシャ、ガツガツと食べた。次に向かったのは青い地球。レーダーでかわいいトミー坊やを見つけると、まっしぐらに飛んだ。一方、トミーはもうすぐ寝る時間。いろんな怖い怪獣の話を聞いている。翌朝「おまえをたべちゃうぞ!」と飛びかかってきたのは、なんと・・・

トニー・ロスは1938年イギリス生まれ。美術学校で学び、1976年から絵本を描き始める。オランダの銀の鉛筆賞、ドイツ児童図書賞など多くの賞を受賞している。
本書は、怪獣やおばけはそんなに怖いものではないよと、娘に教えるため書かれた。表紙の怪獣からユーモラス。登場人物たちもいきいきとしていて楽しい雰囲気。あっと驚く、どんでん返しの結末も満足がいく。読んであげるなら3、4歳から。

 『図書館だよりvol.105』掲載分

【大人の本棚】

『宝くじの文化史 ギャンブルが変えた世界史』 (ゲイリー・ヒックス著/高橋知子訳/原書房)(676.8 ヒ)

我が国においては、毎週のように様々な宝くじが販売されており、その中でも年末ジャンボ宝くじなどは、メディアで宣伝が毎日流れ、たくさんの人々が宝くじを購入します。宝くじの歴史は人類とともにあり、人々の心を惹きつけてやみません。
本書では、欧米の宝くじを中心に、その成り立ちや発展、かかわりあった歴史的人物や、不正や汚職、詐欺事件といった問題点や、一方その収益によって救われた多くの公共事業など興味深いトピックが数多く取り上げられています。たとえばあの悪名高きカサノヴァがフランスの国営宝くじの創設を支援した話や、大英博物館の基盤が宝くじによって完成した話などが紹介されています。宝くじにまつわるいろいろな人間模様が感じられる1冊です。

ゲイリー・ヒックスは、元ジャーナリストで政治記者。イギリス輸出信用保証局情報部長、信用保険会社の広報担当部長のほか、数多くの世界的な企業でメディア担当アドバイザーを歴任。ロンドンおよびケンブリッジ在住。 


【こどものほんだな】

◆『おせおせ うばぐるま』 (ミッシェル・ゲ さく・え/福音館書店)(E ゲ)

赤ちゃんの乳母車に、「ちょっとやすませて。」と蝶々がとまります。「けろけろ すてきな うばぐるま わたしも ちょっとのりたいな!」とかえる。その後からも、あひる、ねこ、きつねと、次々とやってきます。最後にはクマも。赤ちゃんは押すのに疲れてねむってしまいました。「こんどは、ぼくらが おすばんだ。びゅんびゅん」・・・ 「あら あら ぼく おっきしたの?」ママが抱っこしてくれました。

ミッシェル・ゲは1947年、フランスのリヨン生まれ。音楽家の家庭に育ち、小さい頃から音楽と絵の才能を認められる。『おおかみのクリスマス』『バレンティヌ』など、日本にも数多く紹介されている。
本書は、柔らかい筆のタッチと優しい彩色が、内容と合い相乗効果をあげている。テンポのあるリズミカルな文章も、赤ちゃんや動物達の動きのある表情とともに楽しい雰囲気を醸し出している。読んであげるなら2歳から。

 『図書館だよりvol.104』掲載分

【大人の本棚】

『掏摸(スリ)』 (中村文則著/河出書房新社)(B 913.6 ナ)

主人公の都会で動く天才掏摸師は、ある時極悪の闇の男に見込まれ、不可能としか言いようのない3つの仕事を強要される。「失敗すればおまえを殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す。」 全体を通して反社会的な世界が描かれ、他者の命を躊躇なく奪うこの非道な男が運命を語る勝手な言葉の数々は、読者をも説得するかのような力で迫ってきます。一方、こんな世界の中でも、何を意味するのか・・・「高い塔」という言葉が象徴的に記されています。 2010年第4回大江健三郎賞を受賞。日本文学の外国語翻訳は多くはない中、数ヶ国語に翻訳されている。2012年3月に英語翻訳版『The Thief』が出版され、ウォール・ストリート・ジャーナル紙で同年のベスト10小説に選ばれた。

中村文則 1977年、愛知県生まれ。福島大学卒。著書に『銃』(新潮社)、『土の中の子供』(新潮社)、『最後のいのち』(講談社)、『去年の冬、きみと別れ』(幻冬社)、他


【こどものほんだな】

◆『さあみんなついておいで!』 (ブライアン・ワイルドスミス 絵/太平社)(E ワ)

一頭のヤギが、山のてっぺんに暮らしていました。ある日、ふもとの町から、風にのって素敵な音が聞こえてきました。「ディ〜ン ド〜ン ブルーン ブルーン・・・」ヤギは、大急ぎで山を下り、ヒツジ、ウシ、ブタ、ロバ達をさそいながら、音のする方へと進んでいきます。「さあ、いこうよ。みんな、ついておいで」とても音が大きくなって、着いた所は、コンサートホール。みんなは、思わずかけこみましたが・・・

ブライアン・ワイルドスミスは、1930年イギリスのヨークシャー州生まれ。二つの美術学校で学ぶ。1962年、『ワイルドスミスのABC』でケイト・グリーナウェイ賞を受賞。  本書は、次の場面が穴からのぞけるしかけ絵本。風景や登場人物が繊細に描かれており、パステルカラーも美しい。次々と場面が展開していくので、3歳ぐらいから楽しめるだろう。

 『図書館だよりvol.103』掲載分

【大人の本棚】

『渋滞学』 (西成活裕著/新潮社)(410 ニ)

お盆や年末年始の頃になると、いつも発生する高速道路の大渋滞。車だけでなく人やインターネットなど様々な世界で渋滞は発生し、それによって我々はイライラしてしまう。著者も渋滞が嫌いであったが、嫌いな相手にもどこか良いところはないかと探してみた。すると、様々なものがあることに気づき、逆に渋滞した方が喜ばしい状況があることがわかってくるなど、渋滞について考えることが楽しくなったそうである。イライラする前になぜ混んだのかを考える余裕も生まれ、その理由を取り除けば渋滞がなくなるはずと考えてきたことなどをまとめあげている。 本書は、我々に渋滞による日常のイライラを軽減し、新たな物の見方ができるようになるきっかけを与えてくれるかもしれない。

西成活裕 1967年生まれ。東京大学卒。東京大学先端技術センター教授。著書に『とんでもなく役に立つ数学』(朝日出版社)、『無駄学』(新潮選書)、『疑う力』(PHPビジネス新書)他。


【こどものほんだな】

◆『ねこねここねこ』 (ヤーヌシ・グラビアンスキー 絵/偕成社)(E グ)

ねこ ねこ こねこがいっぱい・・・ 白いペルシャ猫は、何を見てるの? しゃむねこさんは、リボンをつけておしゃれしてるよ。いたずらなねこも、おこりんぼなねこも・・・ どのねこもかわいいな。

ヤヌーシ・グラビアンスキーは1929年、ポーランド生まれ。クラクフ美術アカデミーを卒業後、動物の絵で認められ、ポーランドでは、動物切手シリーズも発行されている。1960年、ミラノトリエンナーレ展児童書イラスト部門にて、金賞を受賞。外国にも多くのファンを持ち、作品は20か国語以上に翻訳されている。 本書は、各ページごとにたくさんの種類の猫の姿が、鮮やかな色彩と奔放なタッチで描写され、表情や動きには、躍動感がある。リズミカルな文章も効果をあげており楽しめる。読んであげるなら3歳から。

 『図書館だよりvol.102』掲載分

【大人の本棚】

『対訳 竹取物語/The Tale of the Bamboo Cutter』 (川端康成現代語訳、ドナルド・キーン英語訳、挿絵 宮田雅之/講談社インターナショナル)(Y913.3 T)

一千年前の作者不明のかぐや姫の物語。英語翻訳と文学作家の現代語訳とを併記し、切り絵作品を挿絵として合体させています。日本人の心にすでにしみこんでいる竹取物語ですが、本書はその表現コラボレーションが新鮮です。序文でドナルド・キーンは、これまでは「彼女の一番の特徴である冷酷さはどこにも現れていない。」また、「原作にある洒落を大変苦労して訳した。」と記しています。 大人の読む竹取物語となっています。

英語訳者ドナルド・キーンの著書に、『日本文学散歩』(朝日新聞社)、『日本語の美』(中央公論社)など。現代語訳者川端康成の著書に、『美しい日本の私』(講談社)など。切り絵宮田雅之の作には、『宮田雅之切り絵の世界』(平凡社)など


【こどものほんだな】

◆『ともだちできたかな?』 (L・ワイスガード 絵/岩崎書店)(E ワ)

卵からかえったばかりのひよこは、最初うさぎに出会い、うさぎの子どもになったのです。父さんうさぎとひよこは、何をするのもいつも一緒。でもある日、駆け回りたくなった父さんうさぎは、「とうさんは、ひとっぱしりしてくるよ。おまえはだれかとあそんでおいで。…」と言い残し、丘の向こうに走っていきました。ひとりぼっちになったひよこは、てんとう虫やイモ虫、すずめ…と次々と出会います。だれかと遊ぶことは出来るのでしょうか?

レナード・ワイスガードは1916年、コネチカット州のニューヘイブン生まれ。プラネット学院にて絵を学ぶ。マーガレット・ワイズ・ブラウンとの作品が数多く、1947年『小さな島』でコルデコット賞を受賞。 本書は、やわらかなタッチで丁寧に描かれている。彩色のないページと交互にある緑とオレンジで色付けられたページが印象的。父さんうさぎの表情が優しく、温かな結末も満足がいく。読んであげるなら3歳から。

 『図書館だよりvol.101』掲載分

【大人の本棚】

『武器としてのことば−茶の間の国際情報学−』 (鈴木孝夫著/新潮社)(804 ス)

日本が世界において真の意味でたくましくなるためにはどうあるべきなのか。それはこの世界の多様性を強く主張し(地域における文化的問題・世界観の違い、例えば捕鯨問題についての欧米諸国との認識の違いなど)、それを守る役目と責任を果たせる立場になることであろうと示唆している。 そのため、現実に存在する国と国との利害の衝突を解決してゆく必要があるが、不戦を誓った日本においては、武力行使ではなく「武器に替る、武器としてのことば」という発想に立ち、ことばの力を最大限に活用して国を守るという戦略を早急に確立する努力を国として全力投球する必要があるが、現状はどうなのか、これからどうするべきなのかを著者として語っている。 昭和末期に書かれた本であるが、昨今の外交問題などと照らし合わせてみると、深く考えさせられる1冊である。

鈴木孝夫 1926年生まれ。慶応大学卒。言語学者。著書に『ことばと文化』(岩波新書)、『閉された言語・日本語の世界』(新潮選書)、『日本人はなぜ英語ができないか』(岩波新書)、他。


【こどものほんだな】

◆『チャンティクリアときつね』 (バーバラ・クーニー ぶん・え/ほるぷ出版)(E ク)

お母さんと2人の女の子がつつましく暮らしている一軒の小さな家に、チャンティクリアという名の一羽の雄鶏がいました。国中で一番という程の素晴らしい鳴き声の持ち主でした。ある日、森に住む悪賢い狐にほめられ、いい気で歌いだしたチャンティクリアは、のどをがっぷりくわえられ、森に連れ込まれそうになります。大騒ぎになりますが、知恵を働かせすばやく狐の口から逃げ出すと、高い木の枝に飛び上がり、言いました。「おあいにくさま、もう、おせじにはのらないよ。」

バーバラ・クーニーは、1917年、ニューヨークのブルックリン生まれ。1959年に本書、1980年に『にぐるまひいて』と2度のコールデコット賞を受賞。他作品は多数。 本書は、家屋から服装まで中世の暮らしぶりが忠実に版画で描かれており、躍動感にあふれている。青・黄・黒・赤だけを効果的に使い、見開きいっぱいに描かれたチャンティクリアは堂々としていて美しい。読んであげるなら4,5歳から。

 『図書館だよりvol.100』掲載分

【大人の本棚】

『対象喪失』 (小此木啓吾著/中公新書)(141.6 オ)

人には、いつまでも悲しむ時間を持つことはよくないという先入観があるかも知れません。しかし、愛する対象を失うという大きな出来事の際に、悲しむ時間を十分に持つことが、その後の心身の回復に大切であること、また心身の病いや狂いが生じた後、原因である「対象喪失経験」に向き合うことにより、回復につながることがあるとも書かれています。「喪の仕事」、「悲哀の仕事」にも触れ、心に悲しみの時間を十分にとれず、その経験を通り抜けていく際に起こる、心身の狂いに対しては、「悲哀の仕事」が有効であることを、精神科医の臨床の現場での分かりやすい事例をあげて説明しています。大規模に起こっている「悲哀排除症候群」、「モラトリアム人間」、などの特別な言葉や、一般によく知られるようになっている「うつ」についての説明もあります。

著者は、1930年東京に生まれる。1954年、慶応大学医学部卒業。専攻は精神医学、精神分析学。著書に、『モラトリアム人間の時代』(中公公論社、1981年)、『秘密の心理』(講談社、1986年)。


【こどものほんだな】

◆『あすはきっと』 (カレン・ガンダーシーマー え/童話館出版)(E ギ)

いまはよる!「おやすみ」といって目を閉じる時間。目をさまして「おはよう!」っていうと、もうその時があす。あすはいっぱいできるよ、今日できなかったことも。丘に登ったり…歌ったりして、あすは今日より高い積み木の塔を積み上げられるし、もしかすると無くしたおもちゃを見つけるよ。新しい友達に会うことになるよ。あすは何から何までずっと今日よりよくなるよ。

カレン・ガンダーシーマーは1936年、マサチューセッツ州ボストン生まれ。1961年、サラ・ロレンス・カレッジ卒業後、イラストレーターなどで活躍。他作品には、「とっときのとっかえっこ」(童話館出版)など。  本書は、温かな優しい色使いで、子供たちの日常が描かれている。細やかな表情も自然で、微笑ましい。内容も今日の出来事を振り返り、あすはもっと良い事があるよと励ましてくれる。読んであげるなら3歳から。

 『図書館だよりvol.99』掲載分

【大人の本棚】

『景気ってなんだろう』 (岩田規久男著/ちくまプリマー新書)(337.9 イ)

第二次安倍内閣が掲げた経済政策「アベノミクス」は今のところ円安、株高とシナリオ通りに進んでいるようですが、果たして思惑通り景気回復といくのでしょうか。この本は新たに日銀副総裁に就任した著者が5年ほど前にヤング世代に向けてわかりやすく書かれた本です。例えば、会社はもうけていても、すぐにお父さんの賃金が上がらない理由やデフレで困る理由、サブプライムローン問題など、景気についての知識を整理して、理解するのに適した一冊です。

岩田 規久男 日銀副総裁(出版当時は学習院大学教授)。著書に『金融入門』(岩波新書)『マクロ経済学を学ぶ』(ちくま新書)『デフレの経済学』(東洋経済新報社)他


【こどものほんだな】

◆『ピーターのいす』 (E=ジャック=キーツ さく/偕成社)(E キ)

ピーターが積木遊びをしていると、お母さんが「しーっ うちには生まれたての赤ちゃんがいるのよ」と、言いました。ピーターの使っていたゆりかごや食堂椅子は、ピンクに塗り替えられて妹のものになっていました。まだ塗っていない小さい椅子を見つけて、家の前に家出、すわろうとすると小さすぎました。そして、ピーターは自分からお父さんに、「スージーのためにピンク色にぬってやろうよ」と言いました。

E=ジャック=キーツは、1916年、アメリカのニューヨーク下町生まれ。独学で絵を学び、第二次世界大戦に従軍した後、雑誌社でイラストレーターとして働く。1963年『雪の日』でコールデコット賞を受賞。以後多くの作品を発表。 本書は、貼り絵のコラージュで描かれ、柔らかな色使いがおだやかで優しい雰囲気。内容も子供の微妙な心の動きがうまく表現されており、親子のふれあいもほほえましい。読んであげるなら3歳から。

 『図書館だよりvol.98』掲載分

【大人の本棚】

『ウェーバー プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』 (安藤英治著/有斐閣)(331.5 ウ)

経済が立ち直って欲しい。と多くの人が希望し、方策がなされています。一方で、その方策に効果があるかどうか、またその反動が出ないかどうかなどという、心配もあるものです。 本書は、資本主義経済の考え方とは一見関係がないように思える倫理観、禁欲主義的で施しをする生き方、使命感をもつ職業観など、その生活態度が、経済の発展に影響する要素となっているという、マックス・ウェーバーの古典的論文について、著者が入門的に要約・解説してまとめたものです。 「職場の規律にしても、それに服する側になんらかの自発性がなければ、十分に機能はしません。こうして伝統主義を打破するには、強い精神力が必要になったわけです。・・・そうした態度もまた、職業を使命として考えてはじめて成立しうるのである、とウェーバーは言います。」と書かれています。

著者は、1921年東京生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。元成蹊大学経済学部教授。著書に、ウェーバー『音楽社会学』(共訳、創文社)、『マックス・ウェーバー研究』(未来社)などがある。


【こどものほんだな】

◆『あひるのさんぽ』 (ポール・ガルドン え/童話館出版)(E ガ)

よたよたとお散歩に出かけた、3羽のあひるの子供たち。道中で、怒った牡牛や腹ペコ狐など、様々な生き物が3羽を狙います。そんな事にはちっとも気づかず、好奇心いっぱいの3羽は、次々とふりかかる危険を、するりするりと逃れ続けて…おうちに帰ります。「おかあさん」「かえってきたのね、かわいいこどもたち」

ポール・ガルドンは、1914年、ブタペスト生まれ。14歳の時、アメリカに移住。高校卒業後、美術学校に通う。力強く表情豊かな挿絵で、昔話やグリム童話など多数手掛ける。1957年には、『ねずみのアナトール』でコールデコット賞次点に選ばれる。 本書は、1981年瑞木書房にて出版され(現在は絶版)、1995年に童話館より再版されたもの。温かなやさしい色遣いで、細部まで描かれている。無邪気な3羽のあひると、彼らを狙う狐や蛇達との掛け合いや、軽妙なストーリー展開が笑いをさそう。読んであげるなら3歳から。

 『図書館だよりvol.97』掲載分

【大人の本棚】

『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』 (増田俊也/新潮社)(789.2 マ)

史上最強の格闘家とは誰なのか。日本柔道史上最強の男といわれる木村政彦もその称号に値する武道家として世間で賞賛されるべき人物であったはずだ。あの力道山との決戦までは…。 どうしてあの戦いにあっさり敗れ、格闘技の表舞台から消えてしまったのか。著者はその真相を知るべく彼の人生に迫った渾身の一作である。昭和の格闘界の流れを裏面から理解するという観点からも興味深い。砂利採り人夫の家に生まれ育ち少年の頃から家を手伝ったことが彼の強さの原点となったことや、奥さんとのほほえましい数々のエピソードなど木村政彦の伝記として読んでもよくできている作品だ。

増田俊也 1965年生まれ 北海道大学中退 (柔道部に所属し七帝柔道を経験)、その後、新聞記者に。現在、小説家、エッセイスト、評論家として活躍。本作で大宅壮一ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞を受賞。


【こどものほんだな】

◆『どれがぼくかわかる?』 (カーラ=カスキン ぶん・え/偕成社)(E カ)

ウィリアムのお母さんは、彼のことならなんでもわかります。「ぼくがみんなの中にいたら、どれがぼくかわかる?」と聞くと「もちろん、わかるわ。」と答えました。ウィリアムは馬や羊や鳥などいろんな生きものになって聞きました。「どれがぼくかわかる?」お母さんはすぐに見つけました。「みつかった。」そこでウィリアムは元の姿に戻って、お母さんの作ってくれたパイを食べました。

カーラ=カスキンは、1932年、アメリカのニューヨーク生まれ。イエール大学卒業後、絵本作家となる。結婚し二児の母親となった後も活躍をつづけ、子どもの本質をしっかりつかんだ作品を発表する。  本書は、パステルカラーを基調に、登場人物たちがシンプルな線で描かれている。また、リズミカルな繰り返しの親子の対話が心温まる。遠目もきくので読み聞かせにも向く。読んであげるなら3歳から。

 『図書館だよりvol.96』掲載分

【大人の本棚】

『鳥が教えてくれた空』 (三宮麻由子著/日本放送出版協会)(914.6 サ)

「現在、私が聞き分けている鳥の声は百種をこえている。」という特技を持つこのエッセイの著者は、4歳で突然に盲目になったが、その後、戸惑いと困難な時期を過ごしながらも、見えないことをマイナス的なハンディとして受け取るよりも、むしろ、そこに特別な意味があると励まされ、シーンレスという造語で自分の状況を客観的に言い表せるようになり、フランス文学、ピアノへの興味を続け、会社勤めをするに至る。その間に、 豊な感性を持つようになり、「耳がさえずりをとらえると同時に、」・・・「かじかんだ両手は、空の中に指を入れたような感触に満たされていた。」「ここは空のはずれなのだ」と、見えない空を体感する感動を持つ。私たちの感性をも呼び覚まそうとするように、やわらかな文調のことばが気持ちよく流れています。

1966年生まれ。上智大学文学部フランス語学科卒業、同大学院博士前期課程修了。著書『鳥が教えてくれた空』で、第2回NHK学園「自分史文学賞」 大賞受賞。著書に、「いのちの音が聞こえる」(海竜社)、「目を閉じて心開いて -ほんとうの幸せってなんだろう-」(岩波書店)


【こどものほんだな】

◆『100まんびきのねこ』 (ワンダ・ガアグ ぶん え/福音館書店)(E ガ)

寂しく暮らす老夫婦は、猫を一匹飼いたくなりました。おじいさんが探しに出かけ、猫でいっぱいの丘を見つけます。どの猫も可愛くて選べず、100万匹を超える猫を連れて帰ってきます。一匹しか飼えないので、「誰が一番きれいな猫だね?」ときくと、猫達は喧嘩を始めました。騒ぎの後残ったのは、痩せこけた猫が一匹。でも、老夫婦に可愛がられ丸々とした猫になりました。

ワンダ・ガアグは、1893年、ミネソタ州にて、ボヘミアからの移民の7人兄弟長女として生まれる。両親を若くして亡くし、経済的困難と闘いながらも、苦学しながら画業を追求した。1928年に出版された本書は、アメリカ絵本黄金期の先駆けとなり、現在もなお版を重ねる。横長の形の見開きいっぱいを使って、奥行きのある構図で流れるように描かれており、白と黒のみの色使いで、丸ゴシックの黒文字はコミカルな内容と合っていて効果を上げている。読んであげるなら3歳から。

 『図書館だよりvol.95』掲載分

【大人の本棚】

『ビルマに暮らして』 − 閉ざされた国の人々と生活 −
(佐久間平喜著/勁草書房)(302.2 サ)

新政権の大臣の外国訪問の最初の国として、1月に副総理がミャンマーを訪問しました。変化の激しいこの国に今多くの国から期待が集まります。著者は、1956年から30年間、外務省職員として滞在し生活した、その経験でその国の要人の横顔から、片いなかの生活まで、経験したことをもとにして書きました。ミャンマーは以前ビルマと呼ばれていて、軍事政権の下、閉ざされた状況が続きましたが、著者は国の人々のやさしさに触れ、日本人と共通する気質もあることや、戦後まもなくの復興途上の日本との共通する状況も感じたとのことです。『愛すべきビルマ人のことを日本の人によく知ってほしい』との気持ちで書かれたのは、この今の時代の私たちの為に書いて下さっていたのではないかとも思えて、予見的な著書というと言い過ぎでしょうか。

著者は、1930年福島県郡山市生まれ。1955年に外務省入省、翌年にビルマへ。1993年に定年退官後、帝塚山大学経済学部助教授を務めた。著書に、『ビルマ(ミャンマー)現代政治史』(勁草書房、1984年)。本書は、奈良県で書かれました。


【こどものほんだな】

◆『いろいろへんないろのはじまり』 (アーノルド・ローベル 作/冨山房)(E ロ)

ずっと昔、色というものがなく、ほとんどが灰色だった頃、魔法使いが青色を作ると、たちまち世界中が青色になりましたが、みんな、なんだか悲しい気持ちになりました。そこで今度は黄色を作ると、なんでもかんでも黄色になり、みんな目がチカチカしてしまいました。次に赤色を作ると、なんとみんなは怒りっぽくなりました。魔法使いはなんとか新しい色を作ろうとしましたができるのは青、黄、赤ばかり。でも、それがあふれて混ざりはじめると…紫、緑、橙、茶、といろんな色ができたのです。「こんなきれいないろなら、めのいたいのがなおりそうですね。」みんなはやっと喜びました。

アーノルド・ローベルは1933年、アメリカのロサンゼルス生まれ。 コルデコット賞、全米図書賞、ニューベリー賞など多数受賞。夫人のアニータ・ローベルとの共作もたくさんある。ユーモラスであたたかなイラストは多くのこどもたちに愛されている。本書では、単色のページから広がっていく世界が色鮮やかで印象的だ。登場人物の表情もコミカルで、効果をあげている。読んであげるなら3歳から。

 『図書館だよりvol.94』掲載分

【大人の本棚】

『貴重書の挿絵とパラテクスト』 − Illustrations and Paratexts of Rare Books −
(松田隆美編/慶応義塾大学出版会)(022.3 キ)

会話の中にあいづちや笑顔があると話が弾みます。ジェスチャーがあると言葉を強める効果がでます。書籍においては、文字レイアウトや挿絵が効果を発揮しています。手書きの文面であれば、書かれた文字イメージの勢いが意味内容を支えることがあります。また、書籍の文字・文面の中に効果的な絵カットを挿入することは様々の理由からなされてきました。 本書では、歴史的に貴重な書物の文字レイアウトや挿絵が用いられてきた経緯・内容について、11人の研究者がそれぞれに、一つのテーマの調査の成果を報告しています。カフカの手書き原稿の写真版全集、奈良絵本・絵巻、聖書の文字レイアウトなどについて、書物を物理的な実態として扱い、文字のレイアウト、字体、空白部分の扱い、その内容と挿絵との関係について、また、その本自体について考えます。 編者、松田隆美さんは、慶応義塾大学文学部教授(中世英文学、思想史)。著書に、『ヴィジュアル・リーディング−西洋中世におけるテクストとパラテクスト』(ありな書房、2010年)、『ロンドン物語−メトロポリスを巡るイギリス文学の700年』(共編著、慶応義塾大学出版会、2011年)。

訳者、嶋村仁志さんは、2010年に<全ての子どもが豊に遊べる東京>をミッションに揚げた組織「TOKYO PLAY」を立ち上げ、企画している。共著『もっと自由な遊び場を』(大月書店)、訳書『プレイワーク 子どもの遊び場に関わる大人の自己評価』(学文社)


【こどものほんだな】

『つきのぼうや』 (イブ・スパング・オルセン さく・え/福音館書店)(E オ)

お月様は、池に映っているもう一人のお月様が、気になって仕方がありません。月の坊やは、お月様に頼まれて、探しに降りていきます。雲を通り抜け、飛行機や鳥の群れに出会い、船着場から海の底までどんどん降りていきます。ついに可愛らしいお月様を見つけた月の坊やは、お月様のところへ連れて帰ります。

イブ・スパング・オルセンは、1921年、コペンハーゲン生まれ。ブローゴー教員養成所、王立美術大学で学び、9年間教師をした後、挿絵を描き始める。1972年、『おとなをつかまえよう』で国際アンデルセン賞を受賞。
本書は、縦長の形を活かして、月の坊やが空から降りてくる様子が、楽しく生き生きと描かれている。もう一人のお月様をめぐる、お月様と月の坊やの会話が心温まる。読んであげるなら3歳から。

 『図書館だよりvol.93』掲載分

【大人の本棚】

『グラウンド・フォー・プレイ −イギリス 冒険遊び場事始め−』(ジョー・ベンジャミン著、嶋村仁志訳/鹿島出版会)(379.3 ベ)

この本に触れて思い起こします。刈入れの終わった田んぼのわらを積みなおして「かまくら」のようにして、中に入るとまっくら。「ぼくらのひみつ基地だ!」とひそひそと話していると、まもなく突然誰かが上からダイビング。すっかり壊れて、がっかり...わんぱくな子ども頃の出来事です。子どもの遊び場所として、これまで規格化、制限され安全なものが良いとされてきたことに対して、この本は一石を投じます。むしろ廃材置き場などの「冒険できる遊び場所」は、子どもたちがのびのびとした遊びの感性を働かせ、そのままの素材を生かして自由に発見発明することのできる空間です。5つの町の事例を紹介しつつ解説しています。大人にも冒険する心が必要なようです。38年前に英国で書かれ、昨年日本で発行されたこの本。一般には、子どもの自然な遊び場所について興味のある方や親御さんたちに。また子供の遊び場所確保を考える管理者、教員の方などにも参考になるでしょう。私達の地域に子どもの為の冒険できる遊び場所・空間があり続けますようにと願わされます。

訳者、嶋村仁志さんは、2010年に<全ての子どもが豊に遊べる東京>をミッションに揚げた組織「TOKYO PLAY」を立ち上げ、企画している。共著『もっと自由な遊び場を』(大月書店)、訳書『プレイワーク 子どもの遊び場に関わる大人の自己評価』(学文社)


【こどものほんだな】

『ふたりのサンタおじいさん』(たなかまきこ え/あまんきみこ ぶん/偕成社)(E タ)

サンタおじいさんにほしいものを書いた手紙をだすと、ちゃんと持ってきてくれると知ったこうさぎの兄弟たちは、さっそく書きましたが、間違って「さんた」という名前のきこりのおじいさんの家に届けてしまいます。おじいさんが、困って空を見上げていると、本物のサンタおじいさんがやってきて手紙を読みます。そして、ふたりのサンタおじいさんはソリにのって、プレゼントをくばってまわりました。

たなかまきこは1942年東京に生まれ、武蔵野美術大学グラフィックデザイン科を卒業。絵本や物語の挿絵作品が数多い。 本書は縁取りのない水彩画で、あたたかくやさしい雰囲気を醸し出している。ふたりのサンタおじいさんたちがみんなにプレゼントをあげる画面が両面いっぱいに細やかに描かれていて楽しい。読んであげるなら4,5歳から。

 『図書館だよりvol.92』掲載分

【大人の本棚】

『「大フィンランド」思想の誕生と変遷 −叙事詩カレワラと知識人』(石野裕子著/岩波書店)(238.9 イ)

フィンランドは北欧諸国の文化的な面を持ちながら、最も東に位置することもあり、東洋的な民族文化の特徴があると言われています。ぬくもりを感じる木つくりの家、家具など、木材の町桜井と共通する面を持つようにも思われます。このフィンランドの国の「カレワラ」という叙事詩から、この国にある思想や民族の「フィンランド性−自分たちらしさ」の意識について、同国の知識人の文書を通して研究しているのがこの書です。歴史の中で生まれまた変化する、民族の特長となる思想について、学問的に掘り下げて扱っています。  ところでこの書を読んだ後、果たして、桜井、奈良には、古くからの慣習はあるにしても、貫く思想のようなものはあるのだろうかと考えます。

石野裕子・・・津田塾大学国際関係研究所研究員。専攻は国際関係学、フィンランド史。著書に、『フィンランドを知るための44章』(共編、明石書店、2008年)、『フィンランドの歴史』(D.カービー著、共監訳、明石書店、2008年)


【こどものほんだな】

『すからおちたこすずめ』(ロバート・フィスカー さく/スベン・オットー 絵/評論社)(E オ)

軒下に雀の親子が住んでいました。あんまり腹ペコで、親の帰りを待っていられなかった小雀は、巣のふちから足を出してすぎて草はらに落っこちてしまいました。巣にもどろうにも飛べません。でも、そこは初めて見る珍しいものばかりでした。ねこに追いかけられ大騒ぎだったけれど、とうさんにはげまされ、やっととんでいけました。

スベン・オットーは、1916年、コペンハーゲン生まれ。絵本の挿絵以外に、本の装幀・ポスター・エッチングなど幅広く活躍している。1978年、『もみの木』で国際アンデルセン賞を受賞。 本書は、登場する生き物たちが表情豊かに、ページいっぱいに描かれていて躍動感であふれている。繊細で優しい色遣い。読んであげるなら3歳から。

 『図書館だよりvol.91』掲載分

【大人の本棚】

『明治/大正/昭和/平成 物価の文化史事典』(森永卓郎 著/展望社)(337.8 ブ)

給料は上がるのが良い。できれば物価は下がってくれると生活が楽になる。そんな思いを持つものですが、この約百年の間、物価はどのようにかわってきたことでしょうか。 「食塩130年の値段史」から、「自動車の100年史」、「土地価格110年の変遷」さらに「国家予算の変遷と国事」、「小学校教員の初任給」など、様々の物価史を網羅しています。たとえば、洋菓子については、『新聞「中外商業」(大正12年3月1日号)は、本邦で西洋菓子を作り出した元祖は森永太一郎氏で、最初に売り出したマシマローが1ポンド(453g)50銭、バナナが50銭、チョコレートが70〜80銭、其の他の乾燥物が、40〜50銭で、輸入品に比べると、殆ど半値にもつかなかった」と伝えている。』と記すなど、様々の物価の変遷史で、文化史を調べる一助になる事典です。 「物価の変遷・推移の記録は、経済活動の全景を伝達する貴重な資料である。と同時にその時代の国家の状況と国民生活の実相を脈々と伝える広義の文化遺産といえる。ときには、その数字が厳粛な歴史の証人となる。」とあとがきにあります。

森永卓郎 経済アナリスト、独協大学経済学部教授。著書に、『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)、同続編。『「家計破綻」に負けない経済学』(講談社)、他。


【こどものほんだな】

『きょうはよいてんき』(ナニー・ホグロギアン さく/ほるぷ出版)(E ホ)

今日はよい天気。きつねは散歩の途中、あんまり歩いてのどがからからだったので、そこにあったミルクの入った壺を全部なめてしまいました。怒ったおばあさんは、きつねのしっぽを切り取り、ミルクを持ってきたらしっぽを返すと言いました。 そこで、きつねは牛にもらいに行きますが、草と交換ならあげるよと言います。草は水となら、小川は水差しを持ってきたら、きれいな娘はあおいガラス玉となら……と、きつねは次から次へと頼んで歩きます。

ナニー・ホグロギアンは1932年 ニューヨーク市生まれ。1966年に“Always Room for One More”で、1972年に本書で、2度コールデコット賞を受賞している。 しっぽを切られた時や、逆にぬいつけてもらった時のきつねの表情が印象的。次々とつながっていくストーリー展開が楽しい。読んであげるなら3歳から。

 『図書館だよりvol.90』掲載分

【大人の本棚】

『年表 昭和・平成史 1926−2011』(中村政則・森武麿 編/岩波書店)(210.7 ネ)

ロンドンオリンピックが終わりました。様々な競技が繰り広げられ、たくさんのドラマが生まれました。その中で、よく耳にしたフレーズ、例えばメキシコ以来44年ぶりとか、ロサンゼルス以来28年ぶりとか。では、その頃とはどんな時代だったのでしょう?これをみれば一目瞭然。コンパクトにまとめられていて、当時の様子が理解できます。 メキシコ五輪が開催されいていた1968年は第二次佐藤内閣の時代で、GNPが資本主義国家第2位となるなど、まさに高度経済成長の真只中にあったことを偲ばせます。 読み物としても面白く、楽しみながら昭和から平成の歴史を学べる一冊です。

中村政則 一橋大学名誉教授。著書に『戦後史』(岩波書店)他/森武麿 神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科教授。著書に『戦後日本農村社会の研究』(東京大学出版会)他。


【こどものほんだな】

『カングル・ワングルのぼうし』(ヘレン・オクセンバリー 絵/エドワード・リア 文/ほるぷ出版)(E オ)

ホットケーキそっくりの葉をつけた木の上に住むカングル・ワングル。リボンやレースや鈴がついた、やたらでっかい帽子をかぶり、顔はとっても見えやしない。誰も来なくてつまらないと思っていたら、カナリヤがやってきて、「こんなすてきな場所なんて見たことない!帽子におうちを作らせて」。他にもいろんな国のいろんな生き物が続々と…。むらさき色した月の夜、みんなのゆかいな踊りが続きます。緑のまあるい葉の上で…。

ヘレン・オクセンバリーは、1938年イギリスに生まれます。美術学校で学んだ後、舞台芸術の仕事に就きます。1965年絵本作家ジョン・バーニンガムと結婚、その影響もあって絵本や挿絵の仕事を始めます。1970年には本書でケイト・グリーナウェイ賞を受賞しています。柔らかな線と暖かな色づかいで描かれており、登場するいろんな生き物がユニークで、生き生きとしています。読んであげるなら3歳から

 『図書館だよりvol.89』掲載分

【大人の本棚】

『はじめての哲学 哲学してみる』(オスカー・ブルニフィエ 文/藤田尊潮 訳/世界文化社)(100 ブ)

哲学には一般的にとても難解なイメージがあり、自分に関係ないものと思いがちです。しかし、この絵本を見ていると哲学が実は私たちの生活に当たり前に存在しているものと思えるような気になってくるから不思議です。最初の「一と多を考える」の章を読むだけで物事に多様な見方があることに気がつきます。その後、それぞれの章でも、キーワードに反対の言葉が並んでいて、思わずいろいろ考えさせられ、自然に哲学していることになっているんだなと思ってしまいます。未来のあなたを変えていくきっかけになるかもしれません。

オスカー・ブルニフィエ…フランスの哲学博士、教育者。おとなのための哲学教室と子どものための実践哲学を広めるため数々の国で活動。日本では『人生ってなに?』(朝日出版社)『よいこととわるいことって、なに?』(朝日出版社)『愛すること』(世界文化社)『生きる意味』(世界文化社)が翻訳出版されています。


【こどものほんだな】

『ちいさなスリッパぼうや』(モニカ・レイムグルーバー え/マンフレッド・キーバー さく/ほるぷ出版)(E レ)

とても小さな透明人間の男の子がいました。ただ一人くさっぱの魔女だけが見ることができましたが、見えたってどうってことないさとバカにしました。どうにかして、みんなに自分の存在を認めてもらいたいと、きれいなスリッパを盗んで歩き回りました。驚いてくれたので、鼻高々でしたが、気づいてくれたのは、男の子ではなく、スリッパだったのです。

モニカ・レイムグルーバーは1946年にオーストリアに生まれました。本書は幻想的な世界を明るい色調と緻密な絵で描かれ、効果をあげています。魔女だけに見えた男の子の表情が印象的です。読んであげるなら4歳から。

 『図書館だよりvol.88』掲載分

【大人の本棚】

『アントニオ・カルロス・ジョビン ボサノヴァを創った男』(エレーナ・ジョビン著/国安真奈訳/青土社)(764.7 ジ)

GDP成長率に追い風が吹き、サッカーのワールドカップやオリンピックを次々に開催する活力みなぎるブラジル。
この国で半世紀以上前に生まれた音楽ボサノヴァ。今もなお、世界中の人々を魅了してやまないメロディとハーモニーを創造したアントニオ・カルロス・ジョビン。

本書は彼の内面の形成過程を、家族ならではの愛情あふれた視点と、深い思いを込めて著した伝記である。ただ一人の妹であるエレーナにジョビンが夢の中で最後に言った「僕の船は港に着いた」という言葉は印象的だ。
これを読んでから改めてボサノヴァを聴いてみるとより深い味わいがあるに違いない。


【こどものほんだな】

『わたしと あそんで』(マリー・ホール・エッツ ぶん/え/福音館書店)(E エ)

原っぱには、ばったやかえるやかけすなど生き物がいっぱいいました。「あそびましょ。」とつかまえようとするとどこかへ行ってしまいます。池のそばの石にこしかけていると…、みんな近くによってきてくれました。「ああ わたしは いま、とってもうれしいの。」

マリー・ホール・エッツは、1895年にアメリカのウィスコンシン州で生まれました。幼少時より絵が上手で絵画の勉強を続けます。後に福祉関係の仕事につきますが、健康を害して絵本を書き始めました。1960年『セシのポサダの日』でコールデコット賞を受賞しています。動物たちと親しんだ幼少期の体験が後のエッツに大きな影響をあたえており、本書も優しいクリーム色の風景の中、動物たちと女の子のやりとりがほほえましく、最後の女の子の笑顔が読者も幸せな気分にしてくれます。読んであげるなら3才から楽しめます。

 『図書館だよりvol.87』掲載分

【大人の本棚】

『「ビジネス書」と日本人』(川上恒雄 著/PHP研究所)(023.1 カ)

本屋に入れば、必ず目にするビジネス書。サラリーマンといわれる人々の読書の中に、必ず入ってくるこのジャンルはいつから誕生し、市民権を得たのだろうか。
著者は日本の高度成長期を象徴する9冊のベストセラーを通して、独自の視点で洞察することにより、サラリーマンの知の獲得の変遷を俯瞰できる1冊に仕上げていて、単なる書評でない内容になっているのが興味深い。

川上恒雄(かわかみ つねお) 1966年、東京生まれ。一橋大学卒業後、日本経済新聞社で新聞記者および出版編集者として勤務。その後、渡英し社会学修士を取得。現在はPHP研究所主任研究員。


【こどものほんだな】

『おおきなおとしもの』(レイ・クルツ え/H.C.アンデルセン げんさく/ジャン・ウォール ぶん/ほるぷ出版)(E ク)

おばさんは1わのめんどりとくらしています。めんどりは毎日りっぱな卵をうみます。ある日、12個の卵が入ったかごを頭の上に乗せて町に売りに行きました。道中、夢を大きくふくらましていきます……。卵を売ったお金でめんどりをたくさん飼い、その卵を売って羊やがちょうを飼い、その毛や羽根も売って豚や牛を飼い、そのうち立派なお屋敷に住むようになって、私は上品で鼻高々の奥様!おばさんは鼻をつーんと上に向けました。そのとたん―― ぴっしゃーん!!あーあ お調子者のおばさん、残ったのはたった1わのめんどりだけでした。

レイ・クルツは1933年ニューヨークに生まれました。黒い線で描かれた陰影による立体感や鮮やかな色彩、登場人物達のユーモアあふれる表情が魅力的な絵本です。読んであげるなら4,5歳から楽しめます。

 『図書館だよりvol.86』掲載分

【大人の本棚】

『娯楽と癒しからみた古代ローマ繁栄史』(中川良隆著/鹿島出版会)(510.9 ナ)

剣闘士。映画『グラディエーター』の影響で日本でも名前を聞いた人は多いだろう。戦いは、対人だけではなく、ライオンなどの猛獣と対決する「猛獣狩り」も行われていたようだ。そんな剣闘士には、奴隷からなんと皇帝までがいたという。「剣闘士皇帝」コンモドゥスである。彼もプロの剣闘士や猛獣たちと戦い、ローマっ子を熱狂させたそうだ。しかし彼は、猛獣狩りの際、元老院議員に度のすぎた威嚇行為を行い、部下に殺害され、政治的理由で「剣闘士皇帝」の幕を下ろした。また、模擬海戦を行うために人工池等に水を張り、軍艦を浮かべて歴史的海戦を再現していたそうなのだが、人工池と軍船の大きさを比較している所など興味深い。建築・歴史的読み物いずれの面からも面白い1冊である。

中川 良隆(なかがわ よしたか)昭和22年、東京生まれ。慶応義塾大学工学部卒業。工学博士、技術士(建設部門)。


【こどものほんだな】

『はげたかオルランドはとぶ』(トミー・ウンゲラー 作/文化出版局)(E ウ)

はげたかのオルランドは、砂漠で倒れていた金鉱探しの男を助け、持っていた写真から、アメリカに飛びました。奥さんと坊やが会いに行く道中、山賊に襲われますが、またもやオルランドが助け出し、インディアンの村に着き、お父さんと再会します。村はみんなで金鉱堀をはじめて栄え、オルランドは誰からも好かれるはげたかになりました。

トミー・ウンゲラーは1931年、フランスに生まれました。1956年にアメリカに渡り、画家・絵本作家など多方面にて活躍、1998年国際アンデルセン賞画家賞を受賞しています。本書に登場する禿鷹他、『へびのクリスター』の大蛇、『こうもりのルーファス』などの動物も、独特のユーモアで、とても魅力的に描き出されています。読んであげるなら4,5歳から楽しめます。

 『図書館だよりvol.85』掲載分

【大人の本棚】

『「本屋」は死なない』(石橋毅史著/新潮社出版)(024.1 イ)

本著は、著者が、様々な書店、書店員を訪ねて交わした言葉、思いがつづられている。序章、終章合わせると10章から構成されるが、ほとんどの章で共通することは、「棚づくり」である。「書店員が本のタイトルに詳しくても意味はない。」「個別の商品知識、棚の構成が不可欠になる。」と語るのは岩波ブックセンター社長の柴田氏。「押さえておくべき作家の代表作を見つけないと棚はつくれないし…」とつぶやくのは月に約90冊読む、時代小説コーナーの田口書店員。
 「書店員こそ見に行くべき」と称される福島県南相馬市立中央図書館、「図書館にもいたバケモン」こと早川氏など、本に携わる人々のそれぞれの棚への思いが読み取れる。

石橋毅史(いしばし たけふみ)1970年、東京生まれ。出版社勤務を経て、新文化通信社入社。現在フリーランス。


【こどものほんだな】

『こぐま学校のバザー』(カートリッジ さく/偕成社)(E カ)

こぐま学校でバザーがひらかれることになりました。みんなで手作りのものを持ち寄るのです。エリックとルーシーの兄弟のうちでも家族そろってバザーに出す品物の準備にとりかかります。石に絵や模様を描いたぶんちん、マッチ箱をきれいに飾ったおたのしみばこ、たまごの殻に大根の種を蒔いて育てたたまごマンなどです。前日にはクッキーも作りました。
さあ、こぐま学校の バザーの はじまり はじまり。

カートリッジは1950年、ロンドンに生まれました。1979年にはイギリスの優れた新人画家に与えられる、マザー・グース賞を受賞しています。本書は、あたたかいパステル色で室内の装飾やこぐま達の洋服も細部にわたって描かれており、また、おはなしに登場した作品の作り方も載っています。読んであげるなら4,5歳から楽しめます。

 『図書館だよりvol.84』掲載分

【大人の本棚】

『能に憑かれた権力者 秀吉能楽好記』(天野文雄著/講談社出版)(K773.2 ア)

秀吉といえば茶好き、吉野の花見など、こと、趣味においても、話題を欠かない男である。本書は、そんな男が愛したものの1つ、能についてを著している。秀吉は、鑑賞にとどまらず、役者として舞台に立つことが好きであったようだ。吉野山に来た際にも、「吉野詣」を秀吉自らが演じた。名所などを舞台にして、自らの功績をたたえる能をつくらせ、当地で演じるという、天下人らしい凝りようであったという。演者と演目が書かれた、「吉野蔵王堂前番組表」の中には、秀吉以外にも豊臣秀次、宇喜多秀家、小早川秀秋など、秀吉以後の歴史を左右する豪華な武将たちの名前も記載されている。

天野文雄(あまの ふみお)1946年、東京生まれ。著書に『能苑逍遥』などがある。


【こどものほんだな】

『かねもちのねことびんぼうなねこ』(B・ウェーバー 文と絵/大日本図書)(E ウ)

立派な家に住んで、良い名前と、おいしい食べ物と、柔かい寝床をもっている猫もいます。でもスキャットは野良猫です。自分だけのものなんか何もありません。そばへ寄っていくと、誰もがしっ!しっ!という意味の「スキャット」と呼びました。スキャットは自分で食べる物や寝る所を見つけて生きています。ある日、市場で出会った女の子に連れられ、柔かいベッドとグエンドリンという名前をもらいました。

画家バーナード・ウェーバーは、1924年フィラデルフィアに生まれ、ペンシルバニア美術アカデミーで学びました。「ライフ」誌他のグラフィックデザイナーを担当した後、「ワニのライルがやってきた」など多くの作品を手掛けています。
本書は、猫の社会にもある貧富の差をとらえたお話ですが、ユーモアを交えたストーリー展開でコミカルな挿絵が効果をあげています。読んであげるなら5,6歳から楽しめます。

 『図書館だよりvol.83』掲載分

【大人の本棚】

『英国メディア史』(小林恭子 著/中央公論新社)(070.2 コ)

本書は英国メディアの歴史の15世紀から現在までを全7章に分けて、紹介している。その中で特に目に留まったのは、王室とメディアの関わりである。16世紀ごろ、チャールズ1世の公開処刑を伝えるニュース本が登場したそうだ。「私の合図を待て。」というチャールズ1世に対して「待っています。」と答える処刑人の描写が非常に生々しい。ニュース本は政治を国民にとって身近な存在へと変えたという。さらに20世紀まで時代を進ませると、当時「御伽噺のような結婚式」とよばれていたチャールズ皇太子とダイアナ妃のスキャンダルは、暴露本から始まり結果、彼女の死で幕を閉じるに至った。具体的な記述でたどる英国メディア史は、読み物しても味わえる興味深い1冊である。

小林 恭子(こばやし ぎんこ)1958年生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒業後、投資銀行勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙「デイリーヨミウリ」の記者になる。


【こどものほんだな】

『くまさぶろう』(ユノセイイチ 絵/もりひさし 作/こぐま社)(E ユ)

くまさぶろうは、泥棒名人です。砂場で遊んでいる子どものシャベルや、食べかけているコロッケ、さしている傘もです。そして、とうとう人の気持ちまで、すっと抜き取れるようになりました。お腹がすいた時には、お腹いっぱいの気持ちです。痛い気持ち、情けない気持ちまで取ると、子どもたちはとても元気になりました。今もくまさぶろうは、町から町へ旅を続け、泣きたい子どもの心を盗んで歩いています。

画家のユノセイイチは、1912年(大正1年)大分県に生まれました。油絵による抽象画を描くかたわら、児童図書の挿絵や絵本の製作も手がけました。フリーハンドの柔らかな線とこすって彩色した画法が特徴です。
本書もユニークな心温まるストーリーに、暖かなパステル色の絵が効果をあげています。読んであげるなら4,5歳から楽しめます。

 『図書館だよりvol.82』掲載分

【大人の本棚】

『神戸発 阪神大震災以後』(酒井道雄 編/岩波書店出版)(369.3 ブ)

あの未曾有の大震災から約16年の時を経て、日本は東日本大震災を経験することになった。各章では、それぞれ語り手を代えて、ストレスのかかる病院スタッフ、仮設住宅の抽選システムや高齢者の避難所暮らしの問題など、そこには、建前ではなく本音が描かれていて、今回の大震災と重なる所も多い。その中でひとつ、気になったのが、ボランティアについての一文「また救援活動にほんの少しだけ顔を出し、あとはタダメシを食らい宿泊費も浮かし、被災地見学ツアーを楽しむ、という不心得者も散見された。(中略)これらを反省することも教訓にしなければならないだろう。」という。阪神・淡路大震災の教訓はどこまでいかされているのか、もう一度見つめ直し、進むべき本当の復興への道を、考えさせられる一冊である。

酒井道雄(さかい みちお)1931年神戸市に生まれる。1958年京都大学農学部農林経済学科卒業。


【こどものほんだな】

『ゆきみち』(梅田俊作・佳子 さく/ほるぷ出版)(E ウ)

ばあちゃんちで 弟が生まれた。ぼくと とうちゃんは弟に会うために雪の中を急いだ。周りの風景には ばあちゃんとの思い出がいっぱいだ。そのうち雪はどんどんひどくなり、前を歩く とうちゃんは おおまたでずんずん進んで行き、ついにぼくは とうちゃんの姿を見失ってしまう。みんなは、いまごろ、あかんぼうを あやしてるんだろうな……。もう、ぼくの ことなんて、どうでもいいと おもってるんだ。――――「ようし、ぼく、しんでやる。」それでも、再び歩き出したぼくが見つけたのは木にくくりつけた とうちゃんのマフラーだった。そして遠くから ばあちゃんの呼ぶ声が聞こえてきた。

見開きいっぱいに容赦なく吹き付ける雪はダイナミックに、ばあちゃんとの風景は温かな筆のタッチ、と対照的な場面が交互に繰り広げられていきます。読んであげるなら4・5歳から。

 『図書館だよりvol.81』掲載分

【大人の本棚】

『街道をゆく ワイド版3』 (司馬遼太郎 著/朝日新聞社)(915.6 ヤ)

前回取り上げた、『島津義弘の賭け』の島津氏が治めていた地「薩摩」。今回は、司馬遼太郎氏が訪れた「肥薩のみち」の旅に注目して紹介します。※薩摩=現鹿児島、肥後=現熊本

旅の本といえば『るるぶ』や『まっぷる』だが、この『街道をゆく』シリーズではまた違った奥深い旅を味わえる。 『肥後は難国(おさめにくい国』と言われていたそうだ。その肥後に封ぜられたのは、かの加藤清正である。清正の熊本城は、島津氏にとって中央集権の象徴であったのだろうと司馬氏はいう。島津氏は、関ヶ原合戦以降も徳川への臨戦態勢を取り続けたそうだ。 その心意気たるや、「やはり隼人というほかはない。」 司馬遼太郎(しば りょうたろう)1923年〜1996年。 『梟の城』で直木賞受賞。NHK大河ドラマの原作として取り上げられるなど、日本を代表する歴史小説家。『竜馬がゆく』、『坂の上の雲』、『燃えよ剣』などの数多くの作品を遺している。


【こどものほんだな】

『ティムとひこうせん』(ジュディ・ブルック 作/冨山房)(E ブ)

はつかねずみのティムの所にはりねずみのブラウンさんが慌ててやって来ました。麦畑に住んでいる、かやねずみのピペット一家が犬や猫に捕まってしまいそうだというのです。ティムは麦畑へ急ぎました。が、恐ろしい声で吠えるので近づけません。そこで大きな飛行船をふくらまし、こまどりのロビンさんに引っぱってもらいながら飛んでゆき、無事助けることができました。その後みんな大喜びでパーティを開きました。

ジュディ・ブルックは1926年、イングランドに生まれました。学校時代にアーサー・ラッグから美術指導を受け、生涯で最大の影響を受けました。
本書は犬や猫も含め、愛くるしい表情の動物たちが見開きいっぱいに、いきいきと動き回っています。細やかな風景描写も楽しめます。読んであげるなら5,6歳から。

 『図書館だよりvol.80』掲載分

【大人の本棚】

『島津義弘の賭け』 (山本博文 著/読売新聞社)(210.48 ヤ)

今月は、前回紹介した『関ケ原合戦』で「島津の退き口」の一幕を見せる島津氏に注目して紹介します。

島津義弘は、慶長の役の泗川の戦いで、明軍二十万騎に対して五千に満たないほどの少数鋭でこれに勝利したと言われている。数字は『征韓録』によるもので、著者は敵の数に誇張があると考えている。しかし、相手は明軍の主力であることは事実であり、死力をつくした戦いがなければ相手を追い返すのは不可能であり、島津軍の卓越した戦闘力を認めている。この戦いの後、明・朝鮮連合軍は島津氏を「石曼子(シマヅ)」といってその強さを恐れた。
山本博文(やまもと ひろふみ)1957年岡山県生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。著書に『切腹』(光文社 210.5 ヤ)、『加賀繁盛記』(日本放送出版協会 214.3 ヤ)などがある。


【こどものほんだな】

『ビルのふうせんりょこう』(ライナー・チムニク ぶん・え/アリス館)(E チ)

どうしても空をとんでみたいビルは、自分の誕生日に100人のひとに招待状を出しました。《1つか 2つ ふうせんを もってきてください》 誕生日当日、たくさんのお客様が風船を持ってやって来ました。その夜、ばりーん!ベッドにくくりつけられた風船は屋根をつきやぶって空にふんわりこ。まわりのみんなは心配で真っ青です。

ドイツの絵本作家、ライナー・チムニクは5歳のときから絵を描きはじめました。高校を終えるとミュンヘンの美術学校で学び、挿絵の仕事を始めます。
本書は、色鮮やかなたくさんの風船が印象的で、登場人物のユーモラスな表情も愉快です。読んであげるなら4,5歳から楽しめます。

 『図書館だよりvol.79』掲載分

【大人の本棚】

『関ケ原合戦 戦国のいちばん長い日』(二木謙一 著/中央公論社)(210.48 フ)

前回取り上げた『小田原合戦』でも、副タイトルに注目した。今回の副タイトルは「戦国のいちばん長い日」である。実際は、関ケ原合戦は一日で終わった。著者は九月十四日から十五日までを人物をかえ、時間刻みで関ケ原合戦を語る。 結末の分かっている話はドラマチックでもあり、時間刻みで語られる話は非常に緊迫感が伝わってくる。東軍、西軍隔たりなく描かれ、関ケ原合戦の概要をつかむための本として面白い。中でも「午前九時 狙われる石田隊 一命を捧げまつる」の章は石田三成に仕えた島左近ついて描かれている。彼がどれほどの人物であったかが、短い章ではあるがよくわかるであろう。
「三成に過ぎたるものが二つあり島の左近と佐和山の城」
二木謙一(ふたき けんいち)1940年東京生まれ。著書に『大坂の陣』(中公新書)、『中世武家儀礼の研究』(吉川弘文館)などがある。


【こどものほんだな】

『はしって!アレン』(市川里美 絵/クライド=ロバート=ブラ 文/偕成社)(E イ)

アレンは4人兄弟の末っ子です。「ねえさんやにいさんといっしょにいるのよ」ママはいつもそう言いますが、姉さん達はとってもすばしっこくて、やっと追いついても、またどこかへ走っていってしまいます。「いそいで、アレン!」「ほら、はしって、はしって!」ある日、アレンは草の上でころんでしまいました。みんなも戻ってきて寝ころびました。一列にならんで…。アレンにとって、生まれて初めての素晴らしい時でした。

市川里美は1971年にパリに渡り、独学で絵を学びました。本書では「サンケイ児童文学賞美術賞」を受賞、1997年には長年の絵本作家としての活動が評価され、「アーチストに贈るパリ市長賞」を受賞しています。読んであげるなら3,4歳から楽しめます。

 『図書館だよりvol.78』掲載分

【大人の本棚】

『小田原合戦 豊臣秀吉の天下統一』(下山治久 著/角川書店)(210.48 シ)

この著書の副タイトルに「豊臣秀吉の天下統一」とあるが本来のテーマは、北条氏は「なぜ秀吉の攻略を受けなければいけなかったのか」である。つまり秀吉からみた小田原合戦ではなく、北条氏側から見た小田原合戦である。なぜ秀吉の攻略を受けるに至ったかについてだが、秀吉よりも前の織田信長の時代からその複線ははられていたのだと著者はいう。それは第二章の「武田攻めと北条氏の行動」からひもとかれる。北条氏邦宛の北条氏政書状で「甲斐・駿河の情報は、十日以来、当方には一切聞こえず候」とある。この、情報の圏外におかれたことが、小田原合戦に至る引き金となっていく。
下山治久(しもやま はるひさ)1942年東京生まれ、早稲田大学大学院修了(日本中世史専攻)大学院の修士論文のテーマは「北条氏照の領国支配」


【こどものほんだな】

『やまのたけちゃん』(深沢紅子 絵/石井桃子 作/岩波書店)(E フ)

たけちゃんは学校が終わると「ああ、はらがへった!はやくうちへかえろう」とかけ出して行きます。春にはおばあさんが作ったからすおどしに鬼や天狗の絵をぶらさげて田んぼのからすを追い払い、秋には兄ちゃん姉ちゃんと山へ落ち葉かきに出かけ、落ち葉でいっぱいになったかごにこっそりはいあがり、かごの上でどん!とはねると、ごろりん!とかごごと山をかけおりはじめ、大騒ぎになります。

洋画家、童画家の深沢紅子は夫、省三と共に作品を描く一方で子供達に日曜図画教室を開催するなど、子どもや野の花を愛し、没後には軽井沢に深沢紅子野の花美術館が開館しています。
「岩波の子どもの本」シリーズの1冊で1977年に出版されました。懐かしく、のどかな雰囲気がただよう、あたたかみのある絵本です。読んであげるなら5・6才から。

 『図書館だよりvol.77』掲載分

【大人の本棚】

『大和の古代寺院跡をめぐる』(網干善教 著/学生社)(K216.5 ア)

本書には、桜井市の歴史や思想的背景を感じるものもいくつか紹介されています。安倍廃寺は、飛鳥時代から政治の中軸で権勢をもった豪族、安倍氏の氏寺として建立された寺で、有名な日本三文殊菩薩像が祀られている現在の安倍文殊院は、中世の頃拠点が移ったもので、栄華を誇った古代の安倍寺は廃寺となりました。「関西の日光」と異名され、紅葉の名所として知られる談山神社。藤原氏ゆかりの寺院で格式の高い大寺院でしたが、時代の流れで明治維新の際、廃仏毀釈により廃絶しました。談山神社のシンボルともいえる妙楽寺十三重塔などはその名残です。
網干善教氏は、奈良県生まれです。日本の考古学者で関西大学名誉教授、関西大学飛鳥文化研究所長を歴任しました。1972年には、高松塚古墳で彩色壁画を発掘しました。


【こどものほんだな】

『三びきのかなしいトロル』(マリー・ブランド 作・絵/奥田継夫・木村由利子 訳/岩崎書店)(E ブ゙)

大昔からある森に、三匹のトロルがお喋りをしたり、取っ組合ったり、楽しく暮らしていました。でも、人間たちが信じてくれないので時々悲しくなりました。子どもが、「こんな森には、きっとトロルがすんでいる!」というと、大人は決まって、「それはおとぎばなしだ」と決めつけました。ある日のこと、トロルのいることを信じている二人の兄弟がやってきました。

マリー・ブランドはデンマークの絵本画家です。水彩や色鉛筆でかいた繊細な絵が特徴で、多くの創作や民話などに挿絵を描いています。本書も、鉛筆と色鉛筆を用いて、柔らかい色調と優しいタッチで描かれています。トロルについて、明るく陽気な森の小妖精として描かれており、トロルの不思議な力を感じさせてくれます。読んであげるなら4・5歳から楽しめます。

 『図書館だよりvol.76』掲載分)

【大人の本棚】

『絵筆をとったレディ−女性画家の500年−』(アメリア・アレナス 著/淡交社)(720.2 ア)

女性が社会的に、その才能を発揮することが困難であった時代に、輝かしい功績を残した女性画家たちがいました。本書ではルブランやモリゾ、コルヴィッツをはじめ、15世紀から19世紀末までの女性画家32名の稀少な66点の作品を、彼女たちが生きた時代背景なども踏まえ紹介されています。名前も知られていない、最近まで世に埋もれていた女性画家たちも取り上げられており、各時代のジャンルを超えた名画を楽しむことができます。

アメリア・アレナスは1956年ベネズエラ生まれ。84年〜96年ニューヨーク近代美術館教育部の講師として活動。現在は各国の美術館から美術教育講師やゲスト・キュレーターとして招かれ、対話型鑑賞プログラムや展覧会企画に携わっている。


【こどものほんだな】

『あかちゃんでておいで!』(ハイムラー 絵/マヌシュキン 作/偕成社)(E ハ)

トレイシーかあさんは、おなかにいるあかちゃんによくはなしかけます。もうすぐうまれるころになって、あかちゃんは「でていくの いや!」と言い出しました。おねえさん・おにいさん・おばあちゃん・おじいちゃんがそれぞれ声をかけますが、何を言ってもだめ。そのとき、とうさんがかえってきて家族とただいまのキスをかわすと、あかちゃんは自分にもしてほしくて、すぐに出たくなりました・・・。

ハイムラーは1937年アメリカに生まれ、絵画と挿絵の両方を学んだ。多数の児童書や本の表紙絵を制作し、アメリカの優秀児童図書に何度も選定されている。原書は1972年の出版で、白黒のペン画ながら、繊細なタッチがやわらかい表情をかもし出している。おなかの中で動きまわるあかちゃんが見えるのも楽しく、「ちゅっ」とキスをする音もリズミカルである。読んであげるなら4・5歳から。

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